少子高齢化は日本経済を衰退させるだけではない。年金財政も悪化させる。現役世代が支払う保険料で今のシニア世代を支えるという仕組みのため、少子化が進めば進むほど、年金制度の維持が難しくなるからだ。
年金が満額もらえなくなる可能性も
「現在、国民年金の場合は、満額でも6万4941円。平均では5万5000円ぐらいです。サラリーマンや公務員は、これに厚生年金がプラスされます。受給額は給与の額と加入期間によって変わりますが、総務省の調査では、夫婦2人で平均22万円といわれています。
ところが25年後には、受給額が今より2割減になる、という試算が厚生労働省から出ています。いまの40代以下の人たちが年金をもらうころが心配です」
こう教えてくれたのは、経済ジャーナリストの荻原博子さんだ。
「さらに、年金の支給開始年齢を68歳に引き上げるおそれがあるうえ、満額もらえなくなる可能性もあります。『マクロ経済スライド』と、2016年に成立した“年金カット法案”(年金制度改革関連法案)の影響です」(荻原さん、以下同)
年金の支給額を抑制するマクロ経済スライドは“(年金は)100年安心”の美名のもと、2004年に決定したもの。
加えて、この仕組みを強化するため、2021年に施行される年金カット法案では、年金の支給額を賃金変動と物価変動の低いほうに合わせるように変えられる。年金の自動カット装置が仕掛けられたのだ。
「これらによって今後、国民年金なら年およそ4万円、厚生年金ならば14万2000円も減らされる可能性があるといわれています」
それでも今、年金を受給している人ならば、それほど心配する必要はない。
「生活費を22万円必要としていた人も、年をとればとるほど食費などの負担は少なくなります。介護の不安も、寝たきりで『要介護5』になったとしても介護保険制度がありますから、月3万6000円の負担でOK。65歳以上の住民税非課税世帯ならば、支払い上限はさらに下がって2万4600円です」