ロールモデルのない時代
これまでの時代は、例えば尊敬や憧れの対象が自分の親であるなど、どうやって生きていくかを考える際のロールモデルが存在していた。しかし、これからは、それを見つけるのは難しいとジェーンさん。
「多数派が納得していた正解が、数年後には不正解になる。そんな変化の早い時代ともいえます。そこにはこれまでのように家族や子どもを持ち、家や車を買って……といったわかりやすい記号のような正解や到達点、成功は存在しません」
言い換えれば自分で考え、決めなければいけない時代になってきた。当然、その負荷は当事者たちにかかってくる。
「私自身も未婚で子どもはいませんし、企業に勤めてもいない。30代半ばまではちゃんと結婚しないと欠陥商品だという思い込みもありました。
でも、それを越えたら糸が切れた凧状態。もうみんなと違うことを恐れることはなくなりましたね(笑)。
ただ、アラサーの人の親世代は、いまの実社会の変化を把握できずに親心から自分と同じ幸せの手法を子どもにもとってほしいと願う人もいるでしょう。
でも、わが子がそれをしなかったとしても、そこはその生き方を見守ってほしい。
この本に登場するのは私を含めてわが道を歩く、ちょっと異端の人ばかり。たったひとつの正解しかなかった親の世代とは異なる女性たちが、この先、楽しく生きていくための手がかりがちりばめられています」
最後に週女読者にメッセージをお願いすると、
「好き勝手に生きてきた私たちでも何とかやっていける、そんな素晴らしい時代が到来しました。
女はこうあるべきと考え、世間が求めるシニア像に合わせる必要はありません。すべての女性は元気に好きに生きてほしいと願っています。女性が輝ける時間は確実に延びています。人生の先輩たちが“オバさんになってから、折り返してからのほうが人生、楽しいかも!”と思わせてくれるのはとてもありがたい。それは若い世代にとっての松明(たいまつ)であり、彼らの足元を明るく照らすはずです」
ライターは見た!著者の素顔
東京生まれ、東京育ちのジェーンさん。小誌編集Yと同年代、実家が近所だったということで「あの地下の喫茶店、行った!」「あの家の子と仲よしだった!」など、超地元トークで大盛り上がり!
撮影に入るとカメラマンの要望に的確に応じ、「さっさと応じなければ終わらないって、わかったから」と笑顔で語る。インタビューから撮影にいたるまでスマートさとぶれない強さ、頼もしさを感じさせる彼女。人生相談に乗ってもらいたい、そんなラジオのリスナーの気持ちがわかる気がした。
●ジェーン・スー●1973年、東京生まれ。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』のMCを務める。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。著書に『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)、『今夜もカネで解決だ』(朝日新聞出版)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)などがある。
(取材・文/松岡理恵)