「僕は基本、出演する作品は脚本で決めるんです。今回は、脚本がよかったのももちろんですが、柳楽(優弥)くんが出るというのも大きかったかな。ずっと彼とちゃんと仕事をしてみたかった。すごい俳優さんとご一緒できるのは、役者にとって何よりも勉強になります」
余命半年の元生徒と教師の再会、そして“最後”の絆を描いた映画『泣くな赤鬼』で主演を務める堤真一(54)。甲子園出場を目指す野球部の監督で、その熱血指導から“赤鬼先生”と呼ばれた高校教師を演じた堤は、
「僕も中学時代は野球をやっていて、顧問の先生がめちゃめちゃ厳しくて怖かったんです。脚本を読んで真っ先にその先生の顔が頭に浮かびましたね。この映画ができたら見てもらいたいなと思っていたんですが、先日亡くなられてしまい、それが残念です」
劇中では熱血監督時代から10年、野球への情熱をすっかり失っていたところで、柳楽演じるかつての教え子、斎藤(愛称・ゴルゴ)と再会する。
「(原作者の)重松(清)さんとも話したんですが、特に男子生徒の場合、教師は父でも上司でもない、子どもが社会に出て最初にかかわる大人。親子にも見えるけど何かが違う。教師と生徒の関係って、とても面白いなと思いました」
挫折を味わった学生時代
ゴルゴは野球の素質を持ちながらも挫折し、高校を中退してしまう。今回は教師役だった堤だが、
「僕は高校も野球部に入ったんですが、だんだんつまらなくなってやめてしまったんです。ほかにやりたいことも見つからなくて、そこから学校に行かなくなってしまって」
と、自身は“ゴルゴ側の人間だった”と振り返る。
「授業に出てないから、そのぶん、冬休みにいっぱい課題をやらなきゃいけない。2時間くらいしか寝ないでレポートを書いて提出したんですけど、そのとき気づいたんです。この根性があるなら、ちゃんと学校行けばよかったって(笑)」
挫折ばかりだったという学生時代。だが、それらの経験は、今では人生において必要不可欠なものだったと語る。
「挫折でもなんでも、その経験がなければ今はなかったわけですから。もしかすると役者をやっている自分もいないかもしれない。何事も今に通じていると思っています。そう考えると、得たものはとても大きいです」