世は、ナンパ戦国時代。出会いのプラットホームの増加とともに、都会を中心に男女の出会い事情はカジュアル化している。その最たる東京の週末に、ナンパ最前線に立つ男性は何を考え、なぜナンパするのか。本企画では東京の週末の夜に一期一会の出会いを求める「ナンパ男子」の生態を深掘りしていく。

 今回は、「2020」に向けてどんどん人が増えていく渋谷が舞台。ナンパスポットとして名をあげる東京の名所の中でも若者が多く、トレンド敏感層な20代前半との出会いもありそうだ。

 クラブやHUBなどでナンパを楽しむ者もいれば、センター街やハチ公などではストリートナンパのガチ勢……いわゆるナンパ師も多く生息する渋谷では、どんなナンパ男子が声をかけてくれるのか。

 クラブナンパはレベルが高そうなので、なるべくゆっくりと歩いているとセンター街でスーツ姿のサラリーマン男性に声をかけられた。南口エリアではスーツ姿もよく見かけるが、センター街ではひとりで歩くサラリーマンはちょっと浮いていたかもしれない。

 顔は普通レベルの塩顔だが、身長が高くスラリとした体形がスーツ映えしていて、派手なスニーカーにデニムの格好の男子が多いセンター街では、逆の意味でいいギャップにもなっていたかもしれない。

恵比寿リーマン
身バレを恐れて渋谷でナンパ中?

「みゆき!?……あ、ごめんなさい人違いでした!」と、超古典的なナンパ常套句(じょうとうく)で声をかけてきた男性は、28歳の恵比寿で働くサラリーマンだという。わざわざ恵比寿を離れてナンパしているのは身バレを防ぐためだろうか。

 センター街の真ん中辺りで人違いをきっかけに声をかけてきた男性は、その後、急に自分語りを始めた。

「今日、友達と飲んでたんですけど、そいつが思ったより早く帰っちゃって。職場が恵比寿なんで、普段あんまり渋谷とか来ないんですけど……なんかメシとかも中途半端だったからお腹減っちゃって! よかったら軽く、お茶だけでもどうですか?」

 ……割愛したが、本当はもっと長々と自分がセンター街に今ひとりでいる過程を話していた。あまりに話が長すぎて、センター街を突っ切り駅まで戻ってきてしまっていたが、1時間でいいというのでついていくことに。なんだかあまり空気が読めなそうな男性だ。

「どこにしましょうかぁ、なんかアイリッシュパブとかぁ、なんでもいいんですけどね。軽く飲めるくらいのところがいいですもんねぇ」

 といいながら平気でアイリッシュパブの前を素通りしてしまうのでちょっと焦る。「大衆居酒屋のようなチェーン店でもいいですよ」と話しかけても、じゃあそこにしましょう! とは返ってこず不安になる。このままホテル直行されるのでは……とヒヤヒヤしていたが、ホテル街の方面にも向かわず、東急ハンズの近くまで歩いてきてしまった。

 どこまで歩くつもりなのかとあきれ始めていたところ、「もう決まらないし、ここでいいですか? サク飲みですし!」と男性が立ち止まったのは、まさかの。

 

 『サイゼリア渋谷東急ハンズ前店』

 

 ……ウソだろ。デートで使うと高確率で恋を逃すという都市伝説もあったりなかったりなファミレス。女子同士やひとりで使うことこそあれど、「初対面の男性とデート(しかもナンパ)」という名目でサイゼリアに来たのは初めてだ。

 しかも、ハンズ前のサイゼといえば高校生の聖地。21時前でもウェイティングが発生しているし、おまけに待っているのはみな制服の女子高生ばかり。並んでまでは入らないよね?

 

 ”ヤマダ 2名 喫煙禁煙どちらでも

 

 名前書いたー! 偽名であろうことはもちろん、喫煙かどうかもお伺いを立ててくれないあたりがなんとも香ばしい……。