お節介なくらい踏み込む
大住には活動を始めてから欠かさない習慣がある。
出会った家族全員の誕生日に手書きでカードを送ることだ。もちろん、亡くなった子の誕生日、そして命日にも。
「ずっと忘れない。いつも一緒です」
そのメッセージは、毎月100枚以上、全国の家族のもとへ届けられている。
NPO活動を展開する中、この10年間にはさまざまなことがあった。大住が経験した折々の葛藤は、ボランティアの理念が世の中に受け入れられるまでの紆余曲折でもある。ときにそのやり方に苦情もくる。
旅行に招待した2か月後に亡くなった子どもがいた。告別式に参列すると、父親は怒っていた。
「あなたはあのとき、俺に息子をおんぶして店の2階へ上れと言った。そもそも何でエレベーターもない店に連れて行ったんだ。バリアフリーの店にするべきだろ」
食事で2階の座敷を使ったことを怒っている。大住は冷静にこう言った。
「お父さん、あのときの息子さんの重さは忘れないはずです。ぼくはあえてあの店を選びました。息子さんの重さを覚えていてほしかったから。その重みを忘れないことが息子さんといまを生きるということではないでしょうか」
もちろん息子を亡くした両親のつらさもわかる。けれど大住は当初から、フルサービスはしないとあらかじめ伝えていた。できることは自分でやってほしい。そうでないと子どもと家族は「かわいそうな人」になってしまうから。多くの家族がそれを了解してくれる。
大住にはこんな思いがある。
「お節介なくらい挑まないと何の喜びも生まれない。本当のうれしいって何だろうと考えるとき、同じことをしても、怒る人と喜ぶ人がいる。でも、あえて踏み込んで嚙み合ったときにしか、ものすごい感動は生まれない。そういう覚悟で向き合いたいんです」