サブスクは若者の生活を変える?
前述のとおり、目新しさも手伝い話題のサブスクリプション。音楽や映像配信をはじめ、多くのサービスはスマートフォンやタブレット端末経由で利用することもあり、いつでも使える手軽さから10代や20代の若者にも浸透し始めている。
しかし、実際には「30代〜40代の男性が主な利用者層」と指摘するのは、若者研究の第一人者・原田曜平さんだ。
「確かに音楽系や映像系のサブスクリプションを利用する若者は少なくなく、学校の休み時間などに同級生と共有しながら、恋愛リアリティー番組を見るなどの楽しみ方をしています。しかし利用はしていても、課金しているかというとそれは少ない。その理由は、不景気感の漂う中で、消費傾向が変化してきたからなんです。
例えば、高校生1人あたりの小遣いの平均が3000〜5000円。働いている20代の手取り年収も200万円を下回るといわれ、とにかくお金を持っていない若者たちが目立ちます。そのため、過去の日本のように“自分で稼いでいいモノを手に入れる”という価値観は薄れ、娯楽に自分の給料などを費やす人たちはごく一部の印象です」(原田さん、以下同)
では、彼らが利用するサービスの代金は誰が支払っているのか。その背景にあるのが「親子消費」と呼ばれるキーワードだ。
「近年、経済的に注目されているのが、2世代にわたって一緒に娯楽を楽しむという文化。かつての日本と比べると親子の関係性が変化しており、例えば母と息子のように異性同士であっても、親子で旅行に行ったり、ご飯を楽しむといった傾向にあります。
なので、サブスクも親世代が入っているものを使ったり、親に頼んで入ったサービスを子どもたちが利用したりする。そういったケースが多く見られますね」
若いうちは親子で旅行なんて面倒だったり、恥ずかしいなんて考えはひと昔前。サブスクに関しても、子どもたちは親と上手に付き合い、賢く消費しているのだ。
「いまは個々人の趣味嗜好が細分化されつつあります。若者はより顕著なのですが、彼らがお金をかけないというのは誤解で、実際には興味があるところにはきちんと費やしています。例えば、フリマアプリ『メルカリ』でブランド物を買い求める子たちもいますが、価格の高低にかかわらず、必要と思うものがあればお金を出しています。
つまり、若者の多くが価値を感じる強烈なコンテンツがあれば今後、サブスク消費が進む可能性はあると思います。アメリカやヨーロッパでは、Netflixを見ないと、クラスの話題についていけないという状況がすでに起きています。日本も最近になってようやくその兆しが見え始めてきたところ。サブスクがさらに浸透し、サービスが充実していけば変わっていくかもしれません」
《PROFILE》
三上 洋さん ◎ITジャーナリスト。セキュリティーやスマートフォン、クレジットカードや電子マネーなどの節約・活用術に精通
原田 曜平さん ◎マーケティングアナリスト。若者やメディアを中心に次世代に関わるさまざまな研究を実施