「ある日突然、夫が私を完全に無視するようになったんです。さすがに耐えられなくなり理由を尋ねると、『子どもを連れてこの家を出て行ってくれないか』と。それはこっちが言うべきセリフじゃないの?と驚愕しましたね。

 さらに問いただすと、産後のセックスレスとそれに起因する夫婦の不仲が原因だと言うんです。確かに、2人目の出産以降そういう行為はなかったですけど、寝室を別にしたのは夫ですし、それ以外の部分では表面的であったとしても、普通の夫婦並みに会話もしていたんですよ」

 怒りが頂点に達した澄佳さんは、初めて女性問題について言及した。「お付き合いしている◯◯さんと、結婚したくなったの?」。

「一瞬の間がありました。どんな反応が返ってくるのかと思えば、『俺がそんな面倒なことをする人間じゃないって、お前が一番知っているだろう』と。ここまできてシラを切り通そうとする夫に、もうそれ以上何を話しても無駄だと確信しました。

『ここは俺が家賃を払っている家なんだから、お前が出て行くのが筋だ』とも言われて。そこからは別居に向けて着々と準備を始め、子どもの転校手続きをし、並行して浮気の証拠集めも続けました」

2年後、ようやく離婚が成立

 半年間の家庭内別居の末に、澄佳さんは子どもを連れて都内の下町にある実家へ引越した。どんなふうにそろばんを弾いたのか、翌月から夫は毎月23万円を澄佳さんの口座に振り込んでくるようになった。

「23万円という額は、法的に定められた婚姻費(=生活費)からは上回る額だと思います。その真意は、自分が女性をつくって一方的に子どもの養育を放棄することへの罪悪感が含まれていたんでしょうね。少なくとも、夫と子どもとの関係自体は良好でしたから……」

 当時小学校2年生だった長男はたびたび父親に会いたがったため、振り込みがある限りは仕方ないと割り切って、2歳の妹とともに夫の家に泊まりに帰らせた。2人を送って行ったある時、マンションの前で夫と彼女に鉢合わせしたこともある。

「相変わらず脇が甘いですよね…。その頃には私はすっかり肝が座っていたので、普通に挨拶をしたんですが、2人は明らかに狼狽した表情でジリジリと後ずさって行ったのが印象的でした。子どもから話を聞くと、家には少しずつ見たことのない家具が増えていて、彼女と半同棲を始めていた様子でした」

 そこから2年後、ようやく離婚が成立。澄佳さんが久しぶりに夫の彼女のフェイスブックを開くと、ステータスが「独身」に変わっていた。あちらも離婚が成立したのだろう。夫とは調停などはいっさい行わず、離婚後も23万円の振り込みを続けること、養育に必要な費用は都度請求に応じること、メドがついたら200万円の慰謝料を支払うことを口頭で約束をさせた(いまだ支払いはなし)。