世は、ナンパ戦国時代。出会いのプラットホームの増加とともに、都会を中心に男女の出会い事情はカジュアル化している。その最たる東京の週末に、ナンパ最前線に立つ男性は何を考え、なぜナンパするのか。本企画では東京の週末の夜に一期一会の出会いを求める「ナンパ男子」の生態を深掘りしていく。

 今回は、駅の再開発工事を終えて、街が様相を変えつつある“下北沢”が舞台。東京の住みたい街ランキングでも毎年、上位にランクインし、2019年は世界的シティガイド『タイムアウト』の「世界で最もクールな街」で2位の座を獲得。今、世界からアツく注目されるカルチャーの街なのだ。

 ナンパのイメージはあまりないかもしれないが、サブカルの街・下北沢も再開発を受け、その雰囲気を変えつつある。北口は相変わらず古着屋やおしゃれなカフェが立ち並び、サブカル色の強い街並みが残る。ところが、南口は流行のタピオカドリンクショップやパンケーキカフェなども増え、若者の数はより一層、増えているように感じる。

 美容室や小さなバー、ライブハウスなども多いので、いわゆる3B(注1)的な男性が非常に多く、サブカル感のある服装(つまり古着コーデ)で街を歩いていると、羊の皮をかぶったサブカル男子から声をかけられやすいというのが、下北沢のナンパの特徴だろう。

(注1)3Bとは、バンドマン・美容師・バーテンダーの意味。あくまでも一例です。すべてのバンドマンさん、美容師さん、バーテンダーさんがそうだとは限りません。

下北沢ではバンドマンはモテ職!?

 ということで、筆者も古着コーデで夜の街を徘徊(はいかい)し、“地元のみんなに愛されてますよ”感のあるバーの前で、少し立ち止まって中をうかがっていると、

「ここ、入ります? よかったら一緒に一杯どうですか?」

 と、ギターを抱えた、おそらくバンドマンであろう男性に声をかけられた。

 彼は長身で、細身の脚にスラリと映えるジャストサイズのスキニーパンツを着こなしている。少しうざったい長さの前髪も中性的な魅力があり、ナンパ慣れしている雰囲気もないように感じた。

 無論、筆者も古着を着て下北沢に来たからには! と思い、「私でよければ」と返して、彼と一緒にバーに入ってみることに──。