洗練された「高見えコーデ」のコツ

 かつて私が憧れたお客様は、ビンテージのエルメスのジャケットに、無印良品のオーガニックコットンのTシャツというスタイルでした。

 今でいう「高見えコーディネート」です。1点だけ目をひく、コーディネートの核になるモノ以外はリーズナブルなアイテムでした。

 もちろん、そのお客様が高見えしていたのは、ぜい肉のない均整のとれたプロポーションだったことも大きいのですが、「コーディネートは、抑えるべきところを抑えていれば、品格が保てる」と感じたのです。そのとき30代だった私は、これからは「品格」や「洗練」を意識する着こなしを目指したいと思いました。

 ほかにも、さまざまなお客様を見てきたなかで、多くの洗練された女性の買い物術に共通していたのは「メリハリをつけること」でした。

 例えば、10万円の予算で上から下までコーディネートするなら、2万円のモノを5点買うより、8万円のモノを1点と、5千円のモノを4枚買うことをオススメします。

 なぜなら、前者は「2万円の人」になってしまうからです。同じ予算なのに、後者は「8万円の人」になります。

 この8万円のモノを選ぶときは、きっといつも以上に熟考しますよね? 「自分の体形に合っているか」「色は飽きないか」「素材は上質か」「5年以上は着るか」など、安易に選ばないはずです。そうやって選び抜いた一着は、着続けるほど自分らしくなじみ、なくてはならない相棒となります。

 そんな一着を身につけていると自信がつき、所作も自然と洗練されていくのです。

 私が買い物術に影響を受けた女性がもうひとりいます。当時、私は20代、有名なスタイリストさんのアシスタントとしてアルバイトをしたことがありました。

 その女性は40代、仕事が乗りに乗っているころで、分刻みでスケジュールをこなす売れっ子でしたから、彼女のプライベートな買い物も頼まれていました。あるとき、「化粧品を買ってきてほしい」とメモを渡されました。

 そのメモを見て驚いたのですが、洗顔石けんは、ドラッグストアで売っているハチミツ入りの500円くらいのモノ、化粧水もリーズナブルなヘチマコロンでしたが、クリームだけは2万円以上もする高級なモノでした。

 その女性は華やかでゴージャス、美しい肌に隙のないメイクがトレードマークだったので「500円の化粧品なんて」と驚愕(きょうがく)しました。このメリハリをつけた買い物の仕方は、若い私には衝撃的で、「なるほど」と勉強になったことを覚えています。

 経営者としても辣腕(らつわん)をふるっていたその方は、「大切なところには惜しみなく投資し、ほかにも同じような効果が期待できるものは、徹底的にコストを抑える」という姿勢がありました。

 そのころ薄給だった私は、いつも「お金がない」と嘆いていましたが、自分の使える予算の範囲内で、ちょっと贅沢するモノと、節約するモノを見極めれば、それなりに満足できることを学んだのです。当時、身につけたこのお金への接し方は、今でも実践している“ミニマムリッチな買い物術”につながっています。

横田真由子=著『本当に必要なことはすべて「ひとりの時間」が教えてくれる』(クロスメディア・パブリッシング刊) ※画像をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
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<プロフィール>
横田真由子(よこた・まゆこ) ◎ミニマムリッチ(R)コンサルタント/オフィスファーレ代表。株式会社ケリングジャパン(旧GUCCI JAPAN)販売スタッフとして有名人やVIP客の担当となり、3年で店長に昇格。顧客獲得数ナンバーワンとなる。VIP客の物選びに女性としての優雅な生き方を学び、独自の「大人エレガンス」を実践する契機となる。 
 2004年、『オフィスファーレ』を設立。ただ使い捨てるのではなく、選んだものを大切に手入れしながら愛し抜く姿勢に真の豊かさを感じ、「上質なものを少しだけ持つ人生」=「ミニマムリッチ(R)ライフ」を提唱し、セミナー、講演、執筆活動を行う。著書に『本当に必要なものはすべて「小さなバッグ」が教えてくれる』(クロスメディア・パブリッシング)など。