自分の便の形状を見れば腸内の状態を把握できる
先ほどから、神山先生が話す「トランジット」は、第3のセルフケア「便の形状を見る」と大きくかかわっている。
そもそも便とは、胃で消化された食べ物が小腸で栄養素を吸収されて、最終的に消化されなかった食物残渣(食物繊維)が含まれた液体(腸液)が大腸に流れてくる。そして大腸を通過する中で水分やミネラルが吸収されていき、固まって便となり肛門付近へと送られるのだ。
つまりは水分が吸収されずに肛門まで流れれば、それは液体状の水様便として出てくる。また、ゆっくりと腸内を流れて固まっていけばウサギ糞のようなコロコロ便になり、ほどよい速さで腸内を流れていけばバナナのように適度なやわらかさの便ができる。
「この大腸の動きの速さを“トランジット”といい、便の形状が水っぽければトランジットが速く、乾燥していればトランジットが遅いと知ることができます。
この速度を7段階に分類したのが『ブリストルスケール』(写真ページの表参照)で、目指したいのが4番のバナナ便。トランジットが標準であることを示しているのです」
つまりはバナナ便が排出されれば、大腸がほどよく動いているということ。とはいえ、出るのがコロコロ便ばかり、イコール、悪いわけではない。
「大腸の中には便がたまっているのが当然で、たまっている時間が長ければコロコロ便になりますし、それを空っぽにする必要はありません。踏まえたうえでどれだけの便を出すか、どれだけ快適に過ごすか、を調整するのが本来の排便コントロール。
目指すのがバナナというだけで形状はどうであれ、ほどほどに出ていれば問題はありません。ただ、みなさんは出す頻度や、スッキリ感、量を気にしすぎてしまうのです」
通常、私たちは「お腹が張る」「ガスがたまっている」のを「便が詰まっているせい」と判断する傾向にあるが、ほとんどの場合は便がたまっているからではなく、「腸のどこかが痙攣を起こしている(痙攣性便秘)」のが原因だと神山先生は話す。
「そして口をそろえて“出て楽になった”と言うのですが、キューッとさせる痙攣から解放されて楽になったのであって、“出せば楽になる”という理論は成り立たないのです。
もちろん腸内で異常は起きていますが、それは便が物理的にたまっていることが原因ではないのです。これも植えつけられた誤った常識ですね」
“便秘”といえば、やれ「悪いこと」「出すには〇〇がいい」「〇〇が言っていた」「テレビや本で紹介された」などなど、作られた便秘のイメージが蔓延している。不安になるから、次々と“解消法”を試してはうまくいかずに、がっかりしての繰り返しばかりの人もいることだろう。
「まずは“便秘を正しく知って、正しく理解してください”ということをいちばんに言いたい。ある意味、『うんトレ』というのは、メンタル、思考パターン、認識の仕方といってもいい。繰り返しますが、便を作ってためることが大前提です。
そして3つのセルフケアを実践してください。これを機に便秘をどう把握したらいいか、便秘とどう向かい合えばいいか、ご自身で考えてほしいですね」