気力もお金も1人目以上に必要

 子どもが幼いころは、ただでさえ毎日が忙しい。

子どもを寝かしつけて、一緒に寝てしまうことが多く、自然妊娠でさえ、現実には難しいものがあります」

 不妊治療へ進むにしても、資金面のハードルが待ち構えている。

「1人目の不妊治療で、貯金を使い果たし、自治体から採卵の補助金が受けられるのも、あと1回だけです」

 在住する地域の自治体では、採卵の補助金は6回まで。2人目のために1回分は残すことができたが、それ以上は全額自費となる。

「これから子どもの教育費でお金が必要なのに、1回数十万円という高額な治療費を払うのはためらいます」

 親の収入による教育格差が広がる日本。子どもの将来のために貯金をする時期に、多額の出費はつらい。

 また、男女ともに仕事でステップアップを考える時期。秋山さんも事務職から、フルタイムの営業職に転職をしたばかり。

「以前は午後からの出勤だったので、平日の午前中にクリニックに通うことができました。現在は通うことができるのは土曜日だけ。不妊治療は明日、排卵日なので注射を、薬を、となるので、土曜日だけというのは現実的ではありません」

 そもそも、フルタイムの正社員に転職したのは、子どものため。

「以前の仕事は就業時間が19:00までだったため、子どもの生活に合わせて、18:00までには終わる仕事を探していました。土日休みで正社員という仕事につくというのは、なかなか難しいことなので、今の仕事は手放したくないんです」

 転職したばかりのため、特に今は休みがとりづらいという。さらに、クリニックから足が遠のく理由がほかにも。

子どもを連れて不妊クリニックに行くのが、気が引けるんです。“1人いるから、もういいんじゃない?”という目で見られますから。自分もそうだったので、よくわかります」

 唯一の救いは、夫が協力的なことと、義父母が2人目を求めないこと。

「夫も義父母も実父母も1人目の不妊治療が大変だったのをわかってくれて、私の身体をいちばんに気遣ってくれています。子どもにも“赤ちゃん欲しい?”と聞くと“いらなーい”ってあっさり言われますから、それが何かの啓示なのかな? と思うこともあります」

 1人目不妊のときは、子どもがいない熟年夫婦や養子を迎えた夫婦と交流があり、いろいろな家族のあり方に出会うことができた。しかし、

「2人目で養子という選択は考えられませんから、自分が産むしかありません。1人目のときに卵子は元気だと言われていたので、不妊治療に進めるかどうかがネックだと思います」

 子どもが生まれれば、つらい不妊治療のことなど忘れてしまうと笑顔を見せてくれた。お金や仕事、何かを犠牲にしなければ難しい2人目の不妊治療。少子化が問題となる中、理不尽な思いがやまない。