遠慮せず、忖度もしない社員
ただ、際限なく、作りたい消しゴムを作るわけではない。たくさんの企画の中から絞っていくのだ。なぜなら、消しゴムを生産する際に必要な蝋や金型などを作るには、1個あたり合計2000万円を要することが珍しくないからだ。
よく「くまモンやふなっしーは作らないのか」と聞かれるが、手をつけないわけがある。
「あれはね、今後10~20年人気を保てるかわからないから。早々に人気がなくなると製作費が回収できなくなるからね」
それにしても、「企画提出者が創業者と社長ということになると、社員は異論を挟みづらいのではないか」と尋ねると、岩沢さんは笑って首を横に振る。
「遠慮なし、忖度なし。この福島さんは、言いたいこと、バンバン言ってくるから」
名指しされた営業の福島さんにダメ出しポイントを聞くと、2点あるという。
1つは取り合わせ。
「うちはセットで売ることが多いんです。ペットやケーキ、料理などのタイトルで、6~8個を1つのパッケージにして売るんですけど、セット化しにくいものを単体で作られてもすぐに店頭に並べられない。すると金型などのコスト回収が難しくなるんですよね」
もう1つは、メインのお客様に向けた商品を中心に企画してほしいということ。
「うちのメインの購買層は、小学校2年生ぐらいまでのお子さん。そうした層に向けた、丸くて可愛い製品が欲しいんです。外国人向けや大人向けもいいんですけどね」
横で聞いていた岩沢さんは、
「ひと昔前なら、“俺は創業者だ、ふざけんな”と言えた時代もあったけど、いまは物が売れない時代だから、批判を受けても我慢して、もっといいもの作るぞと(笑)」
そう言いながら、ダメ出しされた試作品が入ったプラスチックケースを眺めながら、
「ここにさ、“悔しいぞ、福島!”と書きたいけど、気が弱いから書けないの(笑)」
福島さんは「ハハハ」と一笑に付しながら、「この間の鯉、可愛かったですよ」とさりげなくフォローする。