アイドルや俳優も次々と第2の道を

 アイドル系の引退としては、ももちこと嗣永(つぐなが)桃子にも驚かされた。芸能活動と並行して、大学にも通い、今後は幼児教育の道に進むとして、15年間在籍したハロー!プロジェクトを卒業した。

 そして現在、彼女と同じ方向を目指しているかもしれないのが、大橋のぞみだ。ジブリ映画『崖の上のポニョ』の主題歌を歌って大ブレイクした子役だが、当時から、

「友達にドラマを見たよって言われるのも本当は嫌。だって恥ずかしいから」

 とインタビューで語るほど、芸能人とは思えない恥ずかしがり屋だった。小学校卒業を機に学業優先を理由に引退したあと、今ではハタチに成長。そんな彼女が、将来の夢に挙げていたのが「保育園の先生」なのである。

 男性アイドルでは、記憶に新しいのがタッキーこと滝沢秀明。アイドルを引退して、ジャニーズ事務所の副社長に就任という決断は、かつての森且行(オートレーサーに転身)や小原裕貴(広告代理店就職)と比べてもレアケースだ。

 そのほか、難病を患った坂口憲二がコーヒー焙煎士を第2の人生に選んだり、水嶋ヒロが作家を経て料理ユーチューバーになったり、ジェロが歌をやめてIT企業に就職したりと、セカンドステージもさまざまである。今年の人気者では、ラグビー日本代表の福岡堅樹が東京五輪での7人制挑戦を最後に引退すると宣言。2度受験に失敗した医学部をもう1度目指し、最終的には医師になる目標を掲げている。

 かと思えば、スキャンダルのせいで生き方が変わった人も。沢田亜矢子の夫でマネージャーでもあった松野行秀はお騒がせタレントにありがちなプロレスデビューをしたところ、本気になってしまった。ゴージャス松野として10数年、活躍している。

 また、金子恵美は夫の「育休不倫」のあおりを食って、選挙に落ち、政治家を引退。自宅マンションのローン返済のため、タレントに転身した。

 そして、思いがけず人生が好転したのが新垣隆だ。ゴーストライター騒動で時の人になってしまったが、これにより「頼まれたらイヤと言えない人」的キャラでブレイク。ダウンタウンに「鼻クワガタ」をやらされたりした。

 そうやって身体を張ったおかげか、音楽面でも幅が広がり、現在は川谷絵音率いるジェニーハイのメンバーとしても活動中だ。先日の『FNS歌謡祭』でもクラシック仕込みの洒落たキーボード演奏を披露していた。

 その姿が生き生きとして見えるのは、誰かの“ゴースト”ではなく、自分のやりたいことをやれているからだろう。セカンドステージで輝く条件はまさに、自分ファーストなのだ。

(寄稿・宝泉薫さん)


《PROFILE》
ほうせん・かおる ◎アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)