岡根谷さんは、コーポレートブランディング部という部署に所属している。ここはクックパッドの「毎日の料理を楽しみにする」というミッションを広め、料理そのものの価値を広げることを推進している部署。岡根谷さんは、それにとどまらず個人の活動としても海外に出向き、「世界の台所探検家」としての活動を行う。
直属の上司であるコーポレートブランディング部部長の横尾祐介さん(40)は、岡根谷さんを「とにかく自由な人」と言う。
「彼女は、知らない人の家に入りなれているせいか、相手が子どもでも大人でも外国の人でも懐に入り込むのが上手。そして彼女の“食べ物は違っても世の中の人は変わらない。それがわかると相手に優しくできる”という気持ちは少しもぶれない。そこがすごいところですね」
そんな彼女にも、心配な部分があると言う。
「自分が興味を持たないことだとスピード感が落ちることかな(笑)。わかりやすいんです。“あ、これやらないだろうな”と思うことはやっぱりやらない。あと、感受性の豊かな人なので、頭を使って考えすぎるとつまらなくなる(笑)。例えば、岡根谷さんがイベントで自分が体験した話を語るとき、感じたまま素直に話すとダイナミックですごく面白い。なのに、相手が大人だと、まじめな性格ゆえに論理的に伝えようとして結果、普通の説明になってつまらなくなっちゃうんですね。論理的なタイプではないからあんまり考えすぎないほうがいいですね。自分自身が楽しいと思えることを大事にしていってほしいと思っています」
料理には人生を変える力がある
昨年12月中旬、岡根谷さんの姿は、静岡市の長田西小学校にあった。
オリンピック・パラリンピックの関連事業として、静岡市がホストタウンとなっているスペインの理解を深めるための課外授業が行われるという。視聴覚教室には、6年生の生徒126人が集まっていた。
「こんにちは! 私は世界の台所を探検する『台所探検家』です!」
「おー!」という声、「探検家?」という声も囁かれる。
自己紹介もそこそこに、さっそく彼女はプロジェクターを使ってクイズ形式で生徒たちにスペインの家庭料理を紹介していく。
「お母さんの味」といわれるスペイン風オムレツ「トルティージャ」、パンにいろんな食材をのせて食べる軽食「ピンチョス」、そしてかたくなってしまったパンをちぎって入れたニンニクスープ「ソパ・デ・アホ」も。
案の定、生徒たちは「アホ」という言葉の響きに食いつき笑いが起きる。
この『アホ』というのは、ニンニク、『ソパ』はスープのことである、つまりはニンニクスープだ。
「私は、子どもたちに料理を通して“自分の常識の外の世界”に興味を持ってほしいんです。料理という共通言語を持つと、ものの見方が変わるよって伝えたい」
岡根谷さんは、コソボのあるお母さんとの出会いが強く心に残っていると話す。