春日局の食育は『七食飯』
徳川三代将軍になる家光を母に代わって育てたのが春日局(かすがのつぼね)。家光は子どものころは、食も細く虚弱体質。そこで、どうしたらご飯を食べてもらえるかと春日局が考えだしたのが、七色飯。
「春日局は『お命をつなぐものの第一は飯なり』と言ってます。現代人は米をあまり食べなくなってきています。ブドウ糖が不足し、脳力も体力も低下しつつあるのではないかと案じられます」
家光は七色飯で食生活を改善すると、男性機能も高まったという。七色飯は子どもだけでなく、夫たちにもすすめたい。
「麦飯、小豆飯や粟飯もおすすめですね。よく五穀豊穣といいますが、この五穀の基本が米、麦、豆、稗、黍です。七色飯はこれらを上手に取り入れています。今でも白米が上等と思い込んでいる人がいますが、雑穀をおいしく食べたことのない、気の毒な人だと思います。そのくらい雑穀ご飯は味も栄養にもパワーがあります」
ドラマにもなる、大奥。ここに足を踏み入れることができる男性は将軍のみ。女性だけの世界だ。この大奥を作ったのが、春日局。将軍家光は30歳を過ぎても世継ぎが生まれず、これに危機感を抱いた春日局が、とにかく家光好みの美女を集めたことが、大奥の始まり。
時代や将軍の側室(本妻以外のお手つきの女性)の数によって異なるが直接、将軍に会える直の奉公の女性が300人前後。これだけのライバルの中で将軍の愛を得るには、美肌磨きにも力が入ろうというもの。
そんな大奥で、美人になれると大流行したのが、なんとかまぼこ。お正月にはもてはやされるけれど、普段はどちらかというと地味な食べ物。「大奥女中たちは、自分たちが食べたいものを取り寄せることができたのですが、かまぼこは大人気だったようです」
なぜ、かまぼこが美容食なのか。
「タンパク質を豊富に含んでいるのですね。タンパク質は筋肉や臓器、皮膚といった組織、そして酵素やホルモン、血液にいたるまで、そのほとんどを作るために必要になります。
美肌効果でいえば、肌のくすみを減少させて色白効果がありますし、髪の毛のケラチンもタンパク質でできているので、女性の命ともいわれる美しい髪にも効果があります。かまぼこの特徴は高タンパクで低脂肪、低カロリーだということです」
かまぼこは美人食、私たちももっと積極的にとりたいですね。
《取材・文/つきぐみ(水口陽子・渡辺晴美)》
食文化史研究家、日本人の長寿食研究会主宰。古代から昭和時代の食事復元研究の第一人者。長寿食の研究でもよく知られ、海外からのマスコミ取材も多い。テレビやラジオの出演も多く、NHKテレビ『チコちゃんに叱られる!』にも複数回出演。主な著書に『万葉人の長寿食』(講談社)、『長寿村の一〇〇歳食』(角川書店)など多数。