「パラサイトは、作品賞を取るべき映画。だがパラサイトは作品賞を取れない」という文で始まるその記事で、チャンは「海外の映画通は米アカデミーが自分たちの庭しか見ないとわかっている」と、シニカルに指摘。大多数のアカデミー会員はそれを変えたいと思ってもいないとも述べた。
続いて彼は、「オスカー作品賞を取ることでパラサイトがさらに優れた映画になるわけではない。また、取らなかったからといって劣る映画になるわけでもない」と、冷静な観点からアカデミー賞の意味や存在について考察。
最後は、「パラサイトには、もうこれ以上何かを証明する必要はない。アカデミーには、その必要がある」と、説得力を持つ言葉で締めくくっている。
『ROMA』と『パラサイト』の違い
彼や同様の意見をもつ業界関係者の言葉にどれほど影響力があったのか、正確にはかることはできない。だが、そもそも『パラサイト』がつまらないなら、どう言われたって人は投票しない。同作が支持を集めたのは、素直にこれは良い映画だと思ったからだ。
それが、理由その2。『パラサイト』は、多くの人が純粋に「おもしろい」と感じる映画だったのである。そこは昨年アカデミー賞作品賞にノミネートした『ROMA』との違いでもある。
2019年のアカデミー賞で『ROMA』がギリギリまで『グリーンブック』と争いつつも敗れた背景には、外国語映画であることのほかに、Netflixに作品賞をあげることへの強い抵抗が挙げられた。しかし、それ以前にあの映画を「心から」好きだった人は実のところ、それほど多くなかったのではないか。映画館で見た人はともかく、自宅で見た人からは、あの延々と続く冒頭のシーンですでに飽きてしまったという声も聞いた。