本能寺の変にて主君・織田信長を討ったことで有名な明智光秀。軍事、政治、外交などすべて万能にこなす逸材であったとはいわれているものの、謎が多く、現在伝わっているエピソードは眉唾ものも多いとか……。
気鋭の識者に、バッチリ解説していただきました! これを読めば、『麒麟がくる』のクライマックスがますます待ち遠しくなること間違いなし! 解説は、東京大学史料編纂所教授の本郷和人さんです。
“容姿がいい”という感覚は存在せず
【1】イケメンだったって本当?
写実的ではない可能性があるにせよ、肖像画を見るとイケメンですね。穏やかそうで、粗暴な人相ではない。ただし、「明智光秀がイケメンだった」という証拠なる文書は存在しません。
これは光秀に限った話ではなく、当時は頭がいい、勇ましいといった評価はありましたが、容姿がいいという感覚は存在しなかったのです。そういった記述が目立つようになるのは、戦乱の世が平定した以降です。
出雲阿国の相手役であり歌舞伎の祖とも言われる名古屋山三郎という武士が、その元祖とも言われ“伝説的美青年”と謳(うた)われています。芸能が発達していく過程で、観衆も成立していきます。となると、容姿に対する評価もできあがっていく。裏を返せば、それ以前の時代を生きた武将の容姿は、あくまで後世の想像と言えるでしょう。