むしろ地方が危ないこれだけの理由
新型コロナウイルスも含めた感染症への対応能力は都道府県で異なる。具体例を挙げれば、感染症の専門家が参集する日本感染症学会から専門医として認定を受けている医師は、極めて偏在している。
下のとおり、各都道府県の人口10万人あたりの日本感染症学会が認定する専門医数は、トップの長崎県と最下位の岩手県、山梨県の差は実に25倍超。
■全国の感染症専門医の割合
<ベスト3>
1位:長崎県 5.1人
2位:福岡県 2.4人
3位:東京都 2.3人
<ワースト3>
1位:岩手県・山梨県 0.2人
2位:茨城県 0.3人
3位:群馬県 0.5人
(出典:村上和巳さん提供、数値は人口10万人あたり)
この専門医数と人口10万人あたりの新型コロナウイルス感染者数を掛け合わせると、医療崩壊が危ぶまれるのは次の地域だ。
まず、緊急事態宣言下で特に警戒を要するとされている「特定警戒都道府県」の13都道府県の中で、10万人あたりの感染症専門医が1人未満である北海道、大阪府、岐阜県、石川県、埼玉県、茨城県。そのほかの地域でも、人口1万人あたりの感染者数が特定警戒都道府県で最も低い茨城県の0・51より多く、かつ10万人あたりの感染症専門医が1人未満である山形県、群馬県、山梨県、滋賀県。これらの地域はエアポケットのような危険地帯ともいえる。
一方、累計の感染者が最も多い東京都、これに次ぐ大阪府は現在、感染者の減少傾向が見てとれる。両自治体は日本全体から見て重要機能を抱えており、自治体側が早期から外出自粛要請を行い、テレワークへの切り替えも早かった。当初の緊急事態宣言地域に含まれ住民にも危機感が共有されていたことなども考え合わせると、今後は感染者が減少に向かうとみられる。
むしろ要注意は前述したような自治体の中でも人口規模のより小さい自治体である。こうした県は、人口密度は低いものの逆に特定地域に住民が集住し、人の交流も都市部に比べ多い。新型コロナが入り込めばあっという間に感染者が増加しかねない。そこにきて、もともと医療資源が乏しいため、一気に医療崩壊につながる危険があるのだ。
医療崩壊を防ぐには検査体制の拡充を
国や自治体による病床の整備は一定程度、進んでいるものの、実は地域によってPCR検査体制が不十分なのが現実である。
例えば、厚生労働省が発表している4月22日までの都道府県別のPCR検査実施人数に占める陽性者の割合を見ると1・1~38・5%までとかなり開きがある。陽性率のトップは東京都で、これに次ぐ大阪府は21・7%だが、いずれも検査対象者をかなり絞り込んでいるとみられる。逆に言えば見逃しの事例があり、感染が広まりやすい状況が生まれていることは容易に想像がつく。医療崩壊の原因のひとつが感染者の拡大にあることを考えれば、地域によっては検査対象を広げ、無用な感染拡大を防ぐ必要性は高い。