このような場合、『夫のプライドの高さ』に焦点を当てるのが大事です。「桜子ちゃんは学費を払えなくて学校を辞めたらしいよ」そんなふうに学校や近所、親戚中で噂を立てられたら、彼のプライドはどうなるでしょうか? 「海外勤務で十二分にお金を持っているのに娘の学費を滞納し、中途退学に追い込んだ最低最悪な父親」と醜聞が立つのは彼にとって耐え難い屈辱でしょう。「娘さんのためではなく自分(夫)のためだと伝えるのがいいでしょう」と筆者は明子さんにアドバイスしました。
「月55万円」の養育費を希望するが
2つ目は養育費です。明子さんは毎日の掃除、洗濯だけでなく、娘さんの送迎、家庭での監護、食事の準備、身の回りの世話、宿題や勉強のフォローを行っています。この役割を家政婦の派遣会社へ依頼した場合、毎月いくらかかるのか……明子さんは見積を出してもらったところ、「月55万円」という数字がはじき出されたのです。
<家政婦派遣会社の見積(1日あたり)>
・通常料金(9時~17時):2300円/1時間→3時間/日=6900円
・夜間割増(17時~22時):2300円+575円/1時間→3時間/日=8625円
・家庭教師オプション:2300円+1500円/1時間=3,800円
・家事オプション(料理3種類):2300円+1200円/1時間=3,500円
・学校へのお迎え=4000円
・交通費(実費なので仮)=1000円
「入会金、年会費抜きで計算しても1日2万7825円、毎月20日です。あいつは何にもできないんだから、あいつが娘を引き取った場合、このくらいかかるってことですよね?」
明子さんは声を大にして言いますが、家庭裁判所が公表している養育費算定表に双方の年収を当てはめて計算するのが一般的です。夫が海外赴任中の年収は1600万円でした。明子さんは専業主婦なので、この場合、養育費は毎月19万円が妥当な金額です。しかし、夫は帰国後、赴任手当、専門職手当がなくなるので年収は1100万円まで下がります。この場合、養育費は毎月14万円が妥当な金額なので、さすがに月55万円は無理です。
そして3つ目は慰謝料ですが、結婚期間中に受けた精神的苦痛の対価を金銭で補償するものです。夫は今までモラハラや不倫などの問題を起こしてきたので、明子さんに慰謝料を支払うべきでしょう。法務省が公表している司法統計によると結婚10年から15年の場合、慰謝料は438万円。このくらいが妥当な金額です。
最後、4つ目は財産分与です。結婚生活のなかで築いた財産は夫婦の共有ですが(民法758条)、離婚すれば夫婦でなくなり、財産も共有ではなくなるので清算しなければなりません。財産分与の按分(あんぶん)割合は折半が原則なので、明子さんは2分の1の権利を持っています。現時点で明子さんは夫がいくら貯め込んでいるのかを把握していませんが、いざ離婚するタイミングで具体的な金額を聞き出す必要があります。