赤字を埋めるために
前妻の養育費を減らしたいが…
楓さん夫婦の家計収支はどうなっているのでしょうか? まず支出ですが、次女が産まれてからコロナが発生する前の数字は以下の通り。
<毎月の支出>
家賃:12万円
電気代、インターネット、水道:2万円
夫の昼食代:2万5000円
食費:6万円
携帯電話の料金(夫と妻、長女):1万6000円
雑費:3万円
妻の実家への仕送り:3万円
ガソリン代:1万5000円
自動車ローン:3万1500円
自動車保険:5000円
ミルク、オムツ代:2万円
前妻の子への養育費:9万円
合計:46万2500円
一方、収入ですが、もしコロナ問題が起こっていなければ、康生の月収は36万円、楓さんの給付金は12万円、長女からの生活費は5万円。世帯の月収は53万円なので約7万円余る計算です。しかし、コロナの影響で康生の月収は22万円に、そして長女からの生活費はないので世帯の月収は34万円となり、毎月12万円の赤字です。
在宅勤務中、康生は昼食を自宅で済ませるようになったのですが、2人分(楓さん、長女)も3人分(楓さん、長女、康生)も材料費等はほとんど変わりません。しかし、康生の昼食代(月2万5000円)は浮かせることができました。そして緊急事態宣言下で家族が車で移動することがなくなったので、ガソリン代(月1万5000円)はほとんどかかりませんでした。自粛生活によって月4万円を節約することができたものの、それでも月8万円の赤字が残ります。
楓さんはやむをえず、シングルマザー時代の貯金で穴埋めしたのですが、5月末には底を尽き……そんな危機的な状況でも夫は前妻・つぼみへの養育費に手をつけようとしませんでした。康生は「ちゃんと考えているよ」「仕事が再開すれば取り戻せるから」「まだ動くのは早すぎる」と言うばかり。楓さんが頼んでも何もしてくれませんでした。
離婚から現在まで康生は前妻のつぼみといっさい連絡をとっていないのですが、楓さんが目を光らせているので気まずかったのでしょう。もし、養育費を減らしたり、止めたりしたら、離婚の経緯を考えると前妻が烈火のごとく怒り狂うのは目に見えています。それなら借金をしてでも養育費を満額払ったほうがまし。康生はとにかく逃げ腰でした。
しかし、それは家計破綻への入り口です。養育費を借金すれば返済分が支出に上乗せされるだけで収支は赤字のまま。むしろ赤字額が増えます。これでは借金を返済するお金がないので、前回の借金を返済するために今回、また借金をするという自転車操業に陥り、借金はどんどん膨らむばかりで最後に破綻するのは目に見えています。
結局、康生の職場は6月に入っても再開の目途が立たないありさま。楓さんが筆者のところに相談しに来たのは夫まかせにせず、自分で動くことに切り替えたタイミングでした。
楓さんは金銭的に困窮する実の母親に対して毎月3万円の仕送りを続けてきました。しかし、楓さん夫婦が経済的に破綻した場合、母親を金銭的に援助することは難しくなります。筆者は「奥さん(楓さん)が倒れたら元も子もありませんよ」と諭しました。楓さんは背に腹は変えられないという感じで母親への仕送りをいったん中止せざるをえませんでした。楓さんはやるべきことをやったのに、それでも毎月の支出は39万円。まだ5万円足りない状況でした。
さらに支出を切り詰めるには前妻に養育費の見直しを頼むしかありません。楓さんは恐る恐る、前妻のつぼみへLINEを送り、直接会う約束を取りつけたのです。