「コロナで相手と直接会うことは難しいので迷っていました」
愛里さんは当時の心境を振り返りますが、コミュニケーションが主に文字であるメールやLINE、婚活サイト内のメッセンジャーと比べ、リモート婚活は顔を見て、声を聞き、身振り手振りを交えることができるので相手との距離を縮め、信頼を得て、「直接会えたらいいな」と思わせる効果が期待できます。
「これなら大丈夫かなと思いました」
多数と多数が同時に会話をする合コン形式が苦手な愛里さんも、1対1のリモート婚活なら。そう思い、軽い気持ちで試してみることにしたのは4月。どのような魂胆の男たちが登録しているのか露も知らずに。
愛里さんが結婚を急いだ理由
愛里さんがリモート婚活で知り合ったのは長尾俊太(36歳・仮名)。プロフィールによると信州大学を首席で卒業し、外資系金融機関に就職。現在は独立し、資産額が一定以上の富裕層の顧客を対象に、総合的に資産の管理や運用を行うプライベートバンクを経営しており、年収は1600万円。さらに東京オリンピックを見越して都内に複数のマンションを所有しているといいます。
このように彼の国立大学という学歴は輝かしく、外資出身という経歴もきらびやかで、何より1000万円超という高収入は魅力的。もし、リモート先の彼の容姿がよれよれのTシャツに無精ひげ、ぼさぼさの髪だったら愛里さんも「プロフィールは嘘なんじゃ……」と怪しんだでしょうが、実際は高級そうなジャケットに仕立ての良いYシャツ。そして眼鏡をかけていて知的に見えたので、愛里さんはおかしいと微塵(みじん)も思わなかったのです。
「先生に相談したら、郵便物が届くこともありますか? ビニールに入れて送ってほしいんですが……」
と、愛里さんは不思議なことを言います。筆者への相談料を前もってクレジットカードで支払ってくれたのですが、領収書の発行が義務付けられています(行政書士法施行規則10条)。愛里さんは事務所での面談ではなく、LINE電話での相談を希望していました。そのため、領収書を郵送で送るつもりでしたが、なぜビニールに入れなければならないのでしょうか?
愛里さんは父親、母親と一緒に築60年を過ぎた実家で暮らしていました。そんな中、襲ってきたのが昨年の台風19号。未曽有の大雨、強風に耐え切れず、屋根の大半が損壊してしまったそうです。スレート葺きの屋根をすべて新しくするのに必要な費用は300万円超。もちろん、罹災証明書の対象なので支援金は支給されるのですが、全額ではありません。それ以降も次々と台風が発生しており、また別の台風で新しい屋根が破損する可能性もあります。
なぜなら、屋根以外の部分も古いままで、建物は傾き、外壁は崩れ、水道管は壊れた状態だからです。そのため、父親は屋根の本格的な補修をせず、ブルーシートをかぶせるだけで当座をしのごうとしたのです。とはいえブルーシートがすべての雨をはじいてくれるわけではなく、いまだに雨漏りは続き、雨の日はあちらこちらにバケツを設置するありさま。そのため、筆者からの領収書もビニールに入れなければ濡れてしまうというわけ。