『大都会』『西部警察』など数々の人気ドラマや映画で、凛とした独特の存在感を示した俳優、渡哲也さんが8月10日、肺炎のため死去。

 ここ数年は、持病の肺気腫やぜんそくと闘う日々が続いていた。

豪放な“昭和のスター”

 渡さんを長年、取材していたスポーツ紙記者の話。

’91年に、自ら直腸がんであることを発表してますよね。

 ’96年放送の大河ドラマ『秀吉』では、織田信長役を演じていました。『本能寺の変』のシーンは、後に語り草になるほどの熱い演技でした。その撮影に密着していたんですが、『本能寺』シーンの撮影が終わった後、スタッフみんなでメシを食おうとなって、NHKの食堂で会食になりました。そのとき、渡さんはカツ丼とちらし寿司を頼んで、食べていたんですよ。“渡さん、そんなに食べて大丈夫ですか?”と聞いたら“いいんだよ、もう食べたいものを食べるんだ!”って。元気よく頬張っていて、さすがスターは格が違うなと思いました

 ’41年に生まれた渡さんは、兵庫県の淡路島で育った。青山学院大学に進学し、在学中の’64年、当時憧れていたスター、石原裕次郎さんに会えればと立ち寄った日活撮影所でスカウトされた。

 ’65年に映画『あばれ騎士道』の主演でデビュー、俳優としての一歩を踏み出した。

「直腸がんの手術の結果、“人工肛門”をつけたことを公表しました。おそらくその後、最初の撮影だったと思いますが、京都に行ったときのことです。そのときも多くの取材陣の前で、おいしそうにタバコを燻(くゆ)らせていたので、みんなで“大丈夫なの?”って心配したのを覚えています。

 とにかく豪放な方で、昭和のスターって、そういう人が多かったけど、渡さんもそうした場面が印象に残っています」(同・スポーツ紙記者)