畜産とは違い、天然魚は大海原で勝手に育つ。ならば、その漁獲方法や保存方法を、これまで以上に丁寧に行うことで、より美味しく提供できるのではないか─。

「今までは、朝とれた魚こそが新鮮だという価値観があったと思います。ところが、朝とれたカツオよりも、2か月前にとって瞬間冷凍させたカツオのほうが美味しい(笑)。信じられないかもしれませんが、技術力によって鮮度の価値観が劇的に変わりつつある」(米川さん)

 坂口さんも、まだまだ進化するのではないかと予想する。

「食品メーカーさんから聞いた話では、コロナの影響もあって回らないお寿司屋さんへ行く機会が減っているため、需要の低下に伴い鮮魚の単価が下がっていると。大手回転寿司チェーンが巨大な資本力を生かし、通常であれば回転寿司では提供しないような高級ラインナップを仕入れていくといったことも考えられるでしょう」

 4月の既存店売上高はスシロー44・4%減。くら寿司48・1%減、かっぱ寿司51・5%減の売り上げという具合に、コロナによって回転寿司も苦境に立たされている。

 しかしクレームによって発展してきた背景を持つ回転寿司も、ピンチを新たなチャンスにしてしまうに違いない。

プロが教えるコスパの高い食べ方

“足が早い”といわれる青魚の味の進歩も、目を見張ると米川さんが太鼓判を押すように、「アジやイワシを食べると、その回転寿司チェーンのレベルがわかる」とも。

 また、サーモンは冷凍せずにノルウェーから輸入できるようになり、なんと水揚げから24時間で日本に届き、48時間後には、お店で食べることができるまでに進歩しているというから驚きだ。

「従来、回転寿司で提供していたのはトラウトサーモンといって、ニジマスを海水で養殖したもの。しかし今は、本物のサーモンが食べられる。サーモンの人気が高いのは、単純に美味しいからなんです」(米川さん)

「原価率が低いものは、エビやツナマヨ、コーン、かっぱ巻き、卵などが原価30円以下、みそ汁は約10円です」(坂口さん)

 あくまで目安であって、食材のよしあしもあるため、原価率が高い=美味しいとは一概には言えない─、と釘をさすが、少しでも元を取りたい欲張りなユーザーにとっては、覚えておいて損のない情報だろう。

 緊急事態宣言以降、大手チェーンはテイクアウトに力を注いでいる。そのラインナップを見ると、スーパーの鮮魚コーナーに並ぶ刺身類は、質もリーズナブルさも頭ひとつ抜きんでている。

 自宅で家族や友人と、質の高いネタでオリジナル寿司を創作する……、そんな楽しみ方まで回転寿司は提供し始めたのだ。

「これまで回転寿司は、ファミリーレストラン、コンビニエンスストアと競い合ってきましたが、今後はスーパーマーケットが競合他社になるのではないか」と坂口さんが指摘するように、スーパーではなく、回転寿司チェーンに魚を購入しに行く日も、そう遠くないかもしれない。

原価率が高い“神7”ネタ

1位 ウニ 85%

2位 マグロ 78%

3位  ハマチ 66%

4位 イクラ 65%

5位 キングサーモン 64%

6位 かにサラダ 63%

7位 ホタテ 60%