具体的には真美子さんが楽天のショッピングSNS『ROOM』に欲しいものを保存し、彼にも共有します。そして彼が本当に必要だと判断した場合、彼が自分のお金で購入し、後日、真美子さんの家に商品が届くという流れ。

 過去に被災地の自治体が『ROOM』を利用したことで知名度が上がりました。義援金は手元に届くのに時間がかかるのが難点です。一方、被災地以外の人間は自治体が『ROOM』に登録した商品を自分のお金で購入すれば、お金ではなくモノという形で被災地を支援することができます。

「彼はどのような基準で判断するのでしょうか? 例えば、ミネラルウォーターは私の飲料用にも子のミルク用にも使いますよ。彼の作った世界のなかで生活しなきゃいけないなんて息苦しいです。買い物ぐらい自由にしたいですよ。彼はいまだに私をコントロールしたいだけなんです。世間一般的には養育費は現金払いじゃないんですか?」

 真美子さんは不満を口にしますが、不要不急の9万円分の商品が毎月、届いても困ります。彼は養育費を仕分けするのは自分。真美子さんではないと言い張っていますが、法律上、親権者には未成年の子どもの財産を管理する権利を有しています。母子家庭の場合、母親が親権者です。子どもの財産には養育費も含まれるので、毎月9万円を何に使おうが真美子さんの自由です。

 このまま埒(らち)が明かず、家庭裁判所へ調停を申し立てた場合、毎月9万円という金額で決着したのなら「甲(彼)が乙(真美子さん)に対して子の養育費として毎月9万円を乙が指定する金融機関の口座に振り込む方法にて支払う」という調書が発行されます。彼の言う「乙が登録した商品のなかから甲の判断で購入する」と書かれるわけではありません。これは養育費の支払方法が現物支給ではなく現金払いだということを意味しています。裁判所に持ち込めば真美子さんの希望通りになるのだから遅かれ早かれ結果は変わりません。

 母親と彼がやり取りをした結果、彼は「毎月9万円を」「振込で」「子が22歳に達する翌年の3月まで」という条件を受け入れたのです。

豪遊している彼に出産費用を請求

 そして3つ目は出産費用ですが、真美子さんは「目が飛び出ました。45万円もかかるって……そんなに貯金はありませんよ!」と動揺を隠せませんでした。

 真美子さんいわく妊娠中、出産後の検診費用、そして入院や分娩費用、部屋代と合わせると合計で48万円に達するそう。筆者は「出産育児一時金として42万円が支給されるので自己負担は6万円だけですよ」と伝えました。

 彼は子の父親であり、子に対して扶養義務があるのは前述の通りです。それなら毎月の養育費だけでなく、出産費用についても真美子さんと連帯して責任を負わなければならないでしょう。前述の通り、彼の年収は820万円、真美子さんは200万円なので、互いの収入割合に応じて按分するのなら、彼が全体の80%、真美子さんが20%です。

「彼は、同棲中は静かにしていたんですが……彼の友達のインスタでバレバレなんです! 最近は自粛していないお店を見つけたみたいで。高級なシャンパンを開けたりして豪遊しているんですよ。私が悪阻(つわり)で苦しんでいるのに許せません!」

 そのことを踏まえた上で真美子さんは彼は貯金のなかから80%(4万8000円)を支払うことは可能だと言います。彼は「俺はあればあるだけ使っちゃうタチなんだ。明日のことは誰も分からない。俺は今を生きているんだよ!」と持論を展開したのですが、彼の収入や貯金を考えれば揉めるだけ時間の無駄だと悟ったのでしょう。「はした金はくれてやるよ!」という捨て台詞とともに、出産予定月の前月末までに4万8000円を支払うことを約束してくれたのです。

 そして最終的には養育費、出産費用の約束については公正証書という書面に残しました。