こんなときどうする?

■必ず必要なのが名義変更

 空き家を売却する、貸す場合も、まず名義を変更する必要があります。しかし、古い家の場合、ずっと名義変更がされていないケースも少なくありません。

「私の場合も母が亡くなり相続手続きをしようとしたら、家の名義は先に亡くなった父のままでした。そのため、まずは亡くなった母と私と弟の3人で法定相続を前提に名義を書き換え、その後、亡くなった母の相続分を私と弟で法定相続する手続きが必要でした」(大久保先生)

 これが祖父のままだったりした場合には、法定相続人も増え、手続きはいっそう大変になります。しかし、この手続きをふまなければ売却も貸すこともできません。先祖代々続く家などは名義人に行方のわからない親戚などが含まれている場合があり、手間が多くなる。

■古い家ならDIY型賃貸という方法も

 貸し出すためにはある程度のリフォームが必要になりますが、借り手がつくかもわからない物件をリフォームするのはもったいないとか、元手がないという人は「DIY型賃貸契約」という方法があります。この契約では借り手は賃貸でありながら自由にリフォームをすることができ、退去時に原状回復する必要もありません。古いまま貸し出すので家賃設定は相場より安く設定されます。近年、古い家をDIYでリフォームするテレビ企画が人気を呼んでおり、DIY物件も注目されています。試しに募集をかけてみるのもよいでしょう。

■売るも貸すもできない家は?

「あとあとのことを考えれば、更地にしておくのがベストと言えます。

 更地のほうが固定資産税が高いとはいえ、そもそも売却できないような土地なので固定資産税も高額ではないはずです。更地にして防草シートをはっておけば、雑草問題も解決します」

 空き家をそのまま放っておき、近所にご迷惑をかけるような状態になると、自治体から特定空き家に認定されてしまい、強制撤去されることも。もちろん解体費用は所有者に請求されます。

 親の家を負の財産にしないためにも、相続したら早めに対処を決めましょう。

■解体費用の目安

 更地にするためには解体費用が必要となります。目安は木造住宅で1坪当たり3万~4万円、鉄骨造で5万~6万円、鉄筋コンクリートで6万~8万円程度となります。これが基本で、道路状況や庭木やブロック塀などはまた別途費用が発生します。また、アスベストが使われている場合は高くなります。

 自治体によっては解体にも補助金が利用できます。例えば東京都杉並区では上限150万円、神奈川県川崎市では最大100万円の補助があります。細かい条件も含めて、自治体のホームページで確認しましょう。リフォーム補助金などを実施している自治体もあります。

(取材・文/鷲頭文子)


【PROFILE】
大久保 恭子さん ◎株式会社風の代表取締役。社会資本整備審議会委員。主な著書に、『ネットではわからない空き家問題の片づけ方』、『「最期まで自宅」で暮らす60代からの覚悟と準備』ほか。