“人を楽しませること”は現役バリバリ
苦労して今日の“健康体”を得た彼だからこそ、同世代の元気のなさも気にかかる。
「僕が参加している昭和6年生まれの会員が集まった京都の『六羊会』というのがあって、結成時は130人いたのですが、昨年集まったのは10人でした。亡くなった人も多いけど、車イスだからとか、介護者がいないと来れない人も30人ぐらいでね」
今も“人を楽しませること”は現役バリバリ。だからこそ細かいところに目が届く。
「近所の介護付老人ホームには僕の等身大パネルがあって、そこの敬老会で105歳とか103歳の方に花を渡す役目もやるんですけど、みなさん車イスで顔を下に向けたまんま、僕がナンボ話しても反応が少ない。笑ってくれるのは介護している人だけ」
高齢者をいかに喜ばせるかを常に考えている。
「入居者が元気な老人ホームに僕たち男性が行ったら、口紅つけてるおばあちゃんもいます。“みなさんきれいなお嬢さんで。あなたご出身は?”と聞いて新潟だとわかると“新潟美人ですね”と言うとドーッと沸きますよ。僕がもっと暴れまわらなくちゃって思っています」
それもこれも、壮絶な時代を経て“生かされてきた”という気持ちがあるから。
「最近、思うのは“感”で始まる言葉をみんな忘れている気がすること。感謝、感激、感傷、感服、感涙、感泣、感嘆。僕の継母はね、こう言ってました。“おまんま食べられるのは誰のおかげ? 兵隊さんが一生懸命、戦っているからだよ。学校に行けるのは校長や先生がいるから。家では私がいるからアンタもいられるんや。常に感謝の気持ちを持たなきゃアカン”って。
それで包丁を持って僕の腕に当てて“お前のココ切ったら何が出る?”と聞くんです。当然“血や”って言うでしょ。そしたら“血なんか出るか! お前からは出てくるのは感謝だ!”って言うんです」
トレーナーへの感謝の気持ちも忘れていない。ひとりよがりでやる筋トレの危険性も身をもって体験した。
「2年半通ってわかったことは、まずは筋肉をつけるということ。独学でやると、疲れるためにやってしまう。それでケガしたり、腰を痛めたり。トレーナーは“この体勢で耐えて”とか、最善の方法を指導してくれます。女房は以前、1人でジムに通って腰と背骨をやっちゃった」
効果テキメンすぎて、ちょっと困ったことも。
「3か月で顔がホッソリしてきて、トレーナーに“顔は商売道具だから、やせすぎるのは困る”と言っても“顔と身体はつながっているから無理です”と言われて。でも、以前はウエストが92cmあって、自分で靴ひもが結べなかったのが、今日も測ったら79cmです。今までの人生で今がいちばん、調子がいいんです」
4時間を超えるインタビューも終始ハツラツだった。