住宅ローン返済を長女の養育費とみなすことに
自宅マンションの最寄り駅は複数の路線が乗り入れる横浜市内の某駅。しかし、いくら好立地でもコロナ禍で不動産需要が落ち込んでいます。寛子さんが近所の不動産屋を訪ねたところ、住宅ローンの残高(3500万円)では買い手はつかないだろうという見立てでした。
売却できないなら賃貸というのも選択肢ですが、リモートワークの普及で地方移住が注目されている今日このごろ。いくら駅近の物件だからといって2LDKという中途半端な間取りです。寛子さんが複数の不動産屋を回ったところ、毎月13万円(住宅ローンの毎月返済額)の家賃を設定しても借り手は現れないだろうという見解でした。
結局、売ってもダメ、貸してもダメなら、このまま所有し続けるしかありません。筆者は「今さら旦那さんが戻ってきて、奥さんと娘さんを追い出すのは現実的ではありません。そして、旦那さんが住宅ローンに加え、養育費を支払うのは無理でしょう」と助言しました。それを踏まえた上で寛子さんにこんな提案をしました。
娘さんが成人するまで妻子が無償で自宅に住み続け、住宅ローン、固定資産税や管理費、修繕積立金等の諸費用は夫が負担する。ローンの返済を娘さんの養育費とみなします。夫はローンとは別に養育費を渡さないこと、それ以外の支出はすべて寛子さんが負担するという条件付きで、夫は離婚後も妻子が自宅に住み続けることを承諾してくれたそうです。
そこで筆者は契約書(離婚給付契約書)を用意しました。6月下旬、2人は契約書と離婚届に署名。無事に離婚が成立し、これで一件落着したはずでした。
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離婚給付契約書
●●智也(以下、甲という)と●●寛子(以下、乙という)は以下の内容に合意した。
第1条 甲と乙は協議離婚することに合意した。
第2条 間の未成年の子・●●莉緒子(平成19年10月11日生まれ、以下、丙という)の親権者を乙に定める。
第3条 甲は乙、丙が自宅に居住することを認め、自宅の維持費(住宅ローン、固定資産税や管理費、修繕積立金等、名目を問わない)は甲が負担する。本条は丙が満20歳に達するまで有効とする。
第4条 甲は乙に対し、1か月に1回、丙との面接交渉を請求することができ、甲と乙が携帯電話のメールやLINE、通話によって協議の上、丙の福祉に反しないよう、面会の日時、場所、面会方法、送迎方法、甲の両親同席の有無などを決定する。
第5条 甲乙は本件離婚につき相手方に対して本証書に記載した内容以外、何らの請求をしないことを相互に確約する。
(※編集部注:●●部分は苗字が入る)
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寛子さんと夫はお互いの両親に話を通さず、夫婦間だけで合意に漕ぎつけたのですが、そのせいで思わぬ落とし穴が待っていました。ある日、何の前触れもなく寛子さんのLINEにメッセージが届いたのですが、その相手とは──。
※【夫の不倫で離婚】義父母が妻に「貸した頭金を返せ!」理不尽な要求の対処法〈後編〉後編に続く
露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/