痩せることで“生きる意味”を見出す
そんな痩せ姫のひとりが、レネ・マリー・フォッセンという女性です。
11月6日、NHKのEテレで「セルフポートレート 拒食症を生きる」というノルウェーのドキュメンタリー番組が放送されました。レネはその主人公です。10歳で拒食が始まり、20代後半で写真家として注目されました。
その代表作は、自らのやせ細った身体を被写体とする作品です。彼女はその主題について「負の感情や苦痛を。(略)生きることの痛みと、そこにある美を表現したい」と語っています。
つまり、自らのつらさの結果である身体を写真に記録することで、そのつらさをさらに訴えかけようとしたのです。彼女は「人生は難しい」「手に負えない」としたうえで、その生きづらさを拒食によって解決しようとしたのだと振り返ります。
実際、やせることは自らをコントロールできているという自信や快感、他者から評価されたり心配されたりする安心感などをもたらします。また、生きづらさは「死にたい」「消えたい」という願望につながりやすいものですが、病的にやせることはその願望をいくらか満たしてくれます。
ただ、レネは拒食が完全な解決にはならないことに気づき、こんな境地に達しました。
「私のなかに恐怖、怒り、悲しみが渦巻いてる。今まではそんな感情を閉じ込めてきた。箱を開けたらあふれだしそうで怖かった。それを解き放つことが回復への道だと思う」
これはもう本当にそのとおりで、やせること以外の健康な方法で「解き放つ」ことができれば、それに越したことはありません。医師やカウンセラーもそういう方向に持っていこうとします。しかし、食という本能がままならなくなるほどの「生きづらさ」は容易に解き放てるものでもないのです。
まして、食は生きることの基本です。アルコールやクスリのように、完全に断つということができません。拒食や過食を「捌け口」にするライフスタイルを変えるのは、それ以上に至難のワザなのです。