一緒に妻の前で土下座してほしい

 茜さんが受けた案件で、もっとも難易度が高かったのがお叱り代行失敗や後悔を代行スタッフに叱ってもらうサービスだ。わざわざお金を払って叱られたい依頼者はどのような心持ちなのか?

「先日は元大手企業の管理職の60代男性からの依頼を受けました。今は建設現場の警備員として第2のキャリアをスタートしたものの現役時代のプライドが邪魔をして、年下の女性上司の指示を素直に聞けない、と悩んでいました」

 年下上司の代わりに年下で女性の茜さんに叱られることで、大企業の管理職だった見栄やプライドを粉砕したい。そんな荒療治的な依頼だ。

「叱るといっても単に大声で罵倒するだけじゃダメ。相手を諭すように懇々と叱るため、知恵を絞りましたね」

 叱ったと思えば、別の場面では叱られることもある。

多いのは、不倫の謝罪代行です。『浮気がバレて、相手の女を連れてこいと言われているので一緒に妻の前で土下座してほしいという依頼です

 まさか浮気をされた本妻も、目の前の女性が代行業者だとは露ほども思うまい。

喫茶店でグラスの水をかけられたこともありました(苦笑)。場合によっては相手がヒートアップして危害を加えられることがあるので、すぐ近くで別のキャストにボディガードとして待機してもらっています。場所も喫茶店など人目があるところで行いますね。謝罪はなにかとリスクも高い案件なので報酬は高額。先日のギャラは40分間の謝罪で10万円でした」

 代行の範ちゅうは謝罪まで。慰謝料の話などは依頼者に任せる。

 はたして依頼者の男性が反省しているのか、いささか疑問は残るものの、これも家庭平和を維持するうえでの必要な策なのかも。また当然ながら謝罪も、「法に触れたり、公序良俗を乱す依頼は受けていません」(石井さん)

 ここからは石井さんがこれまで遭遇してきた印象深い代行エピソードをご紹介しよう。