CASE1 レンタル彼氏
「学生時代から付き合っていた彼にこっぴどく振られました。原因は彼の浮気……」
レンタル彼氏を依頼した内藤梨奈さん(30代、仮名)は、その胸の内を明かす。
「新しい誰かと出会ってデートをして……というイチからの手順を踏むのは正直しんどい。もう2度と傷つきたくないんです。今は、自分の好きなタイミングで会えて、めいっぱい楽しく過ごせる代行彼氏がちょうどいいんです」
折しも世間はコロナ禍。職場はテレワーク、プライベートでは女子会も激減した。
「傷つきたくないとはいえ、人と会えないのは寂しいので、今はレンタル彼氏とはLINEでのやりとりもお願いしています。何げない会話に癒されていますね」
CASE2 母親代行
「周りの人たちからは、私たちはどこにでもいる普通の母と娘にしか見えなかったはず」
そう語るのは千葉県在住の湊恵利さん(30代、仮名)。
「幼いころから母子家庭で、母はアルコール依存症。機嫌が悪いときは殴る蹴るの暴力もありましたね。高校を卒業してすぐに家を出てからは、ほぼ絶縁状態です」
つらい過去を持つ恵利さんだが、年明けには、かねてから交際している男性とゴールインする予定だ。
「いずれは彼の子どもを産んで、子育てをしたいと考えています。でも私が生まれてくる子どもを母のように虐待しないかが不安で……。これからの人生を前向きに進めるためにも、母親のぬくもりや愛情を擬似とはいえ体感してみたかったんです」
休日に代行の母親と2人公園で手作りのお弁当を食べて、ショッピングモールで買い物……恵利さんが願ったささやかで幸せな時間だった。
「事前にお願いしたとおり、実際に来てくれた母親役の女性は、体形も私とそっくりの少しぽっちゃりタイプ。母親も今はこんな感じなのかなあなど想像していました。彼の話も優しく聞いてくれて温かい気持ちになりました」
CASE3 母娘代行
「10年ほど前、末期の乳がんに苦しむ妻にいちばん“言ってはいけない”言葉を投げつけてしまったんです」
そう悔やむのは牧純一郎さん(60代、仮名)。50歳のとき妻のがんが発覚した。やがて牧さんも妻の介護に明け暮れるようになったが……。
「不得手な家事にイライラが募り、ある日、“痛い痛いばっかり言って……少しは我慢しろ!”“なんでお前はそんな病気になったんだ!”と責めてしまったんです。それがきっかけで妻は、娘を連れて実家に帰っていきました」
5年間の闘病生活を経て1度も顔を合わせることなく妻は他界。娘とは絶縁状態だ。
「後悔と寂しさから自暴自棄に陥りましたが『まずい』と思ってテレビで知ったレンタル家族を頼んだんです」
派遣されたのは妻役と娘役のスタッフ2名。3か月に1度、牧さんのもとを訪れ、部屋を掃除し、たこ焼きをしたり一家団欒のときを過ごす。