学校に行けば芸人になれる時代
前出の成田さんも、
「お金を出してお笑いの学校に行けば、芸人になれて、しかも売れるかもしれない。これは芸人になるハードルを圧倒的に下げました。ダウンタウン以降、内弟子からデビューした芸人はかなり少なくなっていると思います」
M-1優勝コンビを振り返っても、中川家、ブラックマヨネーズ、トレンディエンジェル、銀シャリ、とろサーモンはすべてNSC出身。
芸人の裾野は広がり、さまざまな才能も開花した。
「又吉直樹さんは小説『火花』で芥川賞、矢部太郎さんは漫画『大家さんと僕』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。最近で言えば、『ガレッジセール』のゴリさんが、本名の照屋年之名義で監督した映画『洗骨』で第60回日本映画監督協会新人賞に選出されました。人材が豊富なんです」(成田さん、以下同)
『悪い子は吉本に入れるぞ!』関西では、言うことを聞かない子どもに対して、親はこんな脅し文句を言っていたが、それはもう昔の話。
「有名大学を出たら、大企業の会社員ではなく、芸人を選ぶ。それがあまり珍しいことではなくなってきて、優秀な頭脳がお笑いに入り込んできている。そもそも、お笑いビッグ3のうち、タモリさんとたけしさんだって有名大学に行っていましたから」
銀シャリも笑い飯も偏差値が高い
頭がよくないと、お笑いはできない。
「単純に“頭がいい=回転が速い”ので、当意即妙な返しができます。また、頭がいい人は根がまじめなので、アホなことにも一生懸命取り組みます。ですので、インテリな人ほど、お笑い芸人に向いていると言えるでしょう」
漫才やコントなどのネタを作るにも、
「瞬発力ではなく、継続して笑いを生まなければならない。さらに、フリとオチを作るという構成力も必要。M-1優勝者の学歴を見ても、『銀シャリ』の橋本直さんや『笑い飯』の哲夫さんはともに関西学院大卒です。ある程度の地頭というか、考えられる力がないとダメなんでしょう」
学生芸人の増加が高学歴化の要因のひとつだ、というのはお笑い評論家のラリー遠田さん。
「大学にお笑いサークルがあって芸人のような活動をしている学生が増えています。サークル同士でライブを開催したり学生芸人だけがエントリーできるお笑いコンテストを主催しています」(ラリー遠田さん、以下同)
早稲田、慶應、上智、同志社など比較的、偏差値が高いマンモス校は学生の数が多いため、自ずとサークル活動も盛んだという。