共感型の会話をたくさんしよう
思春期男子の脳は、もうひとつやっかいなことがある。
「記憶の方式が大きく変化します。いわば子ども脳から大人脳へと成長します」
12歳までの脳は、例えば給食の内容と味、友達との会話などを詳細に覚えていたりする。しかし、このような記憶方法を続けていると脳の容量が足りなくなるので、15歳ころからは類似体験に紐づけて覚えるという検索型に変わっていく。
「過渡期である脳は脆弱で、“自分の気持ち”がうまく引き出せないという特徴が。気持ちを聞かれるとイラッとしがちです」
加えて攻撃的になるテストステロンの影響もあり、「どこ行くの? どうするの? 」などと聞かれると、「うるせー」なんてことになってしまうのだ。
この時期は、本人とは無関係の話題について「どう思う? 」と聞くのがいちばん。母親の相談ごとをしたり、「米大統領選、どう思う? 」など社会的な事案を話題にするといいでしょう」
以前は頬をよせ「大好き」などと言ってくれた息子が、まるで他人のようになってしまうのが思春期。けれども、これは一時的なもの。
「テストステロンという男性ホルモンは、18歳以降は落ちついてきます。すると、息子の態度も穏やかになり、もう1度、母親のもとに気持ちが戻ってきます。
反抗期(思春期の脳の混乱)は成長の一環として、ちょっと遠巻きに見守ってあげたいですね」
息子が13歳以下であるなら、ぜひ実践してほしいことがある。
「コミュニケーション優先型の脳の使い方ができる年齢なので、共感型の会話をたくさんしておくのがおすすめ」
共感型の会話とは、「腰が痛いわ」と言えば「寒くなってきたからね。大丈夫? 」などと気持ちをくんでくれる、女性的なやさしい会話のこと。男性脳が苦手とする会話だ。
「子育て中のお母さんは、共感型の会話を忘れてしまいがち。“宿題やったの? ”“早くお風呂に入って”“さっさと寝なさい”でしょ? これぜんぶ男性脳的な、目的思考・問題解決型の会話なんです」
情の通った会話をしないまま子どもを育てると、子どもからも同じような会話しか出てこなくなる。
「脳は装置。入力しないものは出力できません」
息子が弱音を吐いたら、「男なんだからグズグズ言わないの」なんて言わずに、「そうね、大変よね」と気持ちをくんでやる。やさしい言葉を入力してあげるのだ。
「共感型の会話をしておくと、息子が大人になっても、幼少期のようなやさしい会話を楽しむことができます。この入力は母親にしかできないので、意識的にやっておくといいですね」
息子がすでに大人という場合も、諦めることなかれ。
「子どものときよりは時間がかかりますが大丈夫。私の母は90歳になりますが、60歳近い息子の言葉が冷たいというので、やさしい言葉の入力をするようにすすめました。母は“いつも感謝している”とか“あなたが生まれてきてよかった”などを口にするように。すると、息子からもやさしい言葉が多く発せられるようになったんです」
いくつになっても母の愛があれば、変えることができるのだ。