在宅ワークで残業代がつかない、パートの仕事が減った……。そんな厳しい状況に追い打ちをかける公共料金や食料品の値上げ。ちょっとの赤字も慢性化すれば大赤字に─。今すぐすべき改善ポイントと節約アクションを紹介します。
メタボ家計を襲う“値上げラッシュ”
「最近、家計に悩んで相談に来られるケースで目立っているのが“メタボ家計”です」
こう語るのは、家計再生コンサルタントとしておなじみの横山光昭さん。年間の家計相談件数約1000件のうち、半数ほどが該当の事態に陥っている。
「身体のメタボは摂取カロリーが上回って内臓脂肪がつき始めている状態ですよね。家計のメタボも構造は同じ。収支のバランスが崩れ、月1万~3万円程度のちょっとした赤字が出始めている状態を指します。赤字幅が小さいので気づきにくいですが、放置は危険。月1万円でも年間だと合計12万円。次第に生活が苦しくなり家計破綻しかねません」
メタボ家計の原因は、いくつかある。例えば、コロナ不況による残業や勤務日数の減少で収入が減ったのに対し、在宅時間が増えて光熱費や日用品代、惣菜や食事のデリバリー代といった支出の増加が影響することも。そのほかに、横山さんが意外な要因を指摘する。
「低迷する経済や社会の動きに不安を感じて、食材や日用品を過剰にストックしている家庭をよく見かけるようになりました。1個より2個、2個より3個と必要以上に買ってしまう。不安が無駄な出費につながっているわけです」
そんな中、追い打ちをかけるのが相次ぐ値上げラッシュ。右表のとおり、水道代、保険料、外食チェーンなど値上げは多岐にわたり、6月にも電気代、ガス代、食用油などの再値上げで家計への圧迫は避けられない。今後も、鉄道運賃や家電製品などの値上げが予想されている。
「公共料金や食料品などの値上げは、じわじわ首を絞められるような感じで家計収支を狂わせます。毎月の赤字幅が大きくなると、ボーナスや貯蓄での補填が続き、当然ながら貯金ができない。そうなる前に手を打つべきです」
では、どうすればいいのか。
「第一歩は家計の現状を把握すること。食費、電気代など費目ごとにどのくらいお金を使っているか、ざっくり計算してみてください。するとメタボになっている費目が見えてくるはずです。特に、月ごとに支出額が変わる“変動費”に注目していきましょう」
家計簿をつけるのが面倒な人は、1~2週間に1度、レシートを購入店ごとに分けて集計するだけでいい。振り返ることで浪費パターンに気づき、節約意識が格段に高まる。
これから紹介するNG家計の見直し方と節約術をヒントに、今すぐ家計改善を実践しよう!
●今年だけでこんなに値上がり!
(1)電気代・ガス代
大手電力、ガス各社で4月と5月に連続値上げ。東京の標準的な家庭で計700円ほど電気、ガス代の負担増に。原燃料価格上昇により6月も同様に値上げの見込み。
(2)水道代
水道料金は自治体によって異なり、埼玉県川口市は1月、大阪府枚方市は4月に値上げ。神奈川県横浜市では7月から値上げを予定している。
(3)地震保険・火災保険
2017年(+5.1%)、2019年(+3.8%)の値上げを経て、今年1月の地震保険料率の改定により全国平均で5.1%値上げ。
(4)住民税
税制改正により、年収850万円を超える給与所得者で、独身者または23歳未満の扶養親族がいない人は住民税の増税となる。
(5)食用油・マヨネーズ
大手製油メーカー各社で3月から4月にかけて1キログラム当たり30円以上値上げ。一部メーカーは6月以降の再値上げも予定。影響はマヨネーズにも及び、7月から最大10%程度の値上げが発表されている。
(6)小麦粉・砂糖
大手製粉メーカー各社が6月19日納品分から業務用小麦粉を値上げ。それによりパンや麺類など小売製品の値上げが必至。砂糖の卸売価格も3月に引き上げられ、同様の値上げが予想される。
(7)外食チェーン
モスバーガーが4月から商品70品目で10~50円、串カツ田中が同月から全体の9割のメニューを平均10円程度値上げ。そのほか丸亀製麺、リンガーハットなどで一部メニューの値上げを実施。
(8)レジャー施設のチケット
東京ディズニーランド・ディズニシーのチケットが3月から変動価格制を導入。繁忙期の料金が最大500円の値上げ。
(9)大学の学費
東京女子医科大学では、2021年の入学生について6年間の学費が1200万円増加。
(10)銀行のATM手数料
三井住友銀行は4月5日からコンビニのATM手数料を110円値上げ(平日日中)、三菱UFJ銀行も同日よりローソン銀行ATMに限り同手数料を110円値上げ(平日日中)。