お見合いは、人生の伴侶になるかもしれない人との出会い。“素敵な人だといいなぁ”という期待と、“プロフィールとまったく違う人がきたらどうしよう”という不安が入り混じった気持ちで、お見合いの場に出向いて行くと思います。ライターをしながら、仲人としても婚活現場に関わる筆者が目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考える連載。今回は、「お見合いに現れた、予想外の行動を取った人たち」について記していきます。

「まったくやる気ナシ!」という態度

 麻美さん(35歳、仮名)が、雅也さん(37歳、仮名)とお見合いを終えて、私に連絡を入れてきました。

「今日の方は、“お断り”というか“ナシ”です。これまでお見合いをしてきた中で、一番失礼な人でした。ありえないと思いました」

 温和な麻美さんが、とても憤慨していたので、何があったのかを尋ねました。

 お見合いは、都内の有名ホテルのラウンジでした。お見合い時間は14時。その10分前に到着した麻美さんは、待ち合わせ場所になっていたラウンジすぐ横にあるお花屋さんの前で、雅也さんの到着を待っていました。ここは、都内でも有名なお見合いのメッカになっているホテル。ラウンジの入口付近やお花屋さんの前には、14時からお見合いをするであろう人たちが、パラパラと数名集まってきました。そして、3分前に雅也さんらしき人も現れました。

 お見合いに来た男性は、お相手を探そうと視線をキョロキョロさせるのが常ですが、彼は人を探す様子もなく、すっと立ったまま。麻美さんは、スマホにあるお見合い写真と現れた男性をもう一度見比べ、雅也さんだと確信し、声をかけました。

「あの、雅也さんですか?」

 すると、その男性は麻美さんを上から下へ軽く一瞥し、フッと小さな溜息をつくと、ニコリともせずに言いました。

「あ、はい、そうですけど」

 その反応は、明らかに麻美さんを一目見て気に入らなかったような返答でした。麻美さんのお見合い写真は写真館で撮影されており、本人よりもずっと美しく撮れていました。しかし、お見合い写真を盛るのは、婚活では暗黙の了解事項。実際、雅也さんもお見合い写真よりもずっと見劣りする見た目でした。

 何かとても不機嫌そうだったので、麻美さんが気を遣って、「ラウンジの中に入りますか?」と、促しました。すると、雅也さんは、「あ、はあ〜」と答え、麻美さんにはかまわずスタスタと1人でラウンジの入口に向かっていきました。

 ウエイターに席まで案内され、2人は着席したものの、雅也さんはブスっとしたまま。注文したアイスコーヒーが運ばれてくると、つまらなそうにそれに口をつけています。麻美さんは心の中で、「この人とこれから1時間、お見合いするのは苦痛だなぁ」と思っていました。

 しかし、ここは大人の対応をしようと、笑顔で話しかけました。

「今日は、あいにくの雨ですね」

「ええ」

「お仕事は、お忙しいんですか?」

「はぁ、まあ」

「趣味にジョギングとありましたが、私もジョギングは好きです」

「あ、そうですか」

 こちらが一生懸命に話しかけているのに、返ってくるのは、「ええ」「はあ」「そうですか」という、どうでもいいような相槌ばかりだったので、笑顔だった麻美さんも流石にムッとしてしまいました。

 彼女の表情の変化に気づいたのか、お見合いから20分経ったところで、雅也さんがいいました。

「僕は、これで失礼します。ここでゆっくりしていってください。お茶代は、あなたの分も払っていきますから」

 そういうと伝票を持って席を立ち上がり、レジに向かっていきました。残された麻美さんは、唖然茫然。フツフツと怒りの感情が込み上げてきました。

 そして、麻美さんもバッグを持って席を立ち、お金を支払っている彼の後ろを通り過ぎながら、「ごちそうさまでした〜。お先に失礼しま〜〜す」と、務めて明るく、しかし怒りを込めた声で言い放ち、ホテルを後にしました。

 お見合いは、その後の人生をともに過ごすかもしれないお相手を探すための出会いです。そのお相手を選ぶのにまずは第一段階で、プロフィールにある条件で見極めます。実際に会ってみたら、お写真とは全然違う人が来た、自己PRに“明るく社交的“と書いてあったのに、暗〜いオーラが出ていて、話し下手だったというのも、お見合いではあることです。

 しかし、どんな人が来ても、礼を持って礼を尽くす気持ちで、お相手とお話しをしていくことが、常識ある大人のすることです。雅也さんのような方は、お見合いをする資格がありませんよね。