野球選手への「尊敬の気持ち」
また、彼は今年、日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。3月の授賞式では、プロ野球界の大選手・落合博満の名言を引用してスピーチをした。落合は現役時代、日本では初の年俸調停を起こして球団と闘った男だ。
さらにいえば、前出の『週刊文春』記事には、事務所社長のセクハラ疑惑報道のあと、彼が周囲に「不信が確信に変わった」と漏らしたという話が出ている。これは松坂大輔投手の名言「自信が確信に変わった」の影響と考えられる。
もっとも、影響を受けるのも無理はない。彼は高校3年まで本気でプロ野球選手を目指していた。中学1年のときから、現事務所から誘いを受けるも断り続け、大学でも野球を続けるつもりだったという。
それが高校最後の夏、県ベスト8に終わり、助っ人として参加した演劇部で全国大会に出場。そこで芝居の魅力に目覚めたわけだ。そういうことがなければ、今ごろはまだどこかの大学で白球を追いかけていたかもしれない。
そんな彼が夢見たプロ野球界は、高卒新人でもいきなり1億円の契約金を手にできる世界。もちろん、そこには活躍できる期間が短く、大ケガをしたら即おしまいという特殊な事情が関係している。
一方、芸能界もまた、特殊な事情のある世界だ。売り出すために膨大な費用がかかるため、最初は薄給にとどめて、先行投資の回収を優先。そのぶん、売れなくなってからも功労者として長年面倒を見たりする。吉本興業やジャニーズ事務所は、このやり方で成功してきた。
そこには所属タレントの浪費グセを抑えるとか、若いうちに大金を持つのはよくないからといった配慮も働いているわけだが──。当然、疑問を持つ者もいる。