“食育先生”森真理先生に聞く「令和食の実践」

 令和食は1日1食でも効果があります。ご飯にごまをかける、かつお節を利用する、わかめや昆布、豆腐や納豆、具だくさん味噌汁でキノコ類を食べるなど、むずかしくありません。次世代への提案ポイントは“なるべく簡単に!”でないと実践につながりません。

 簡単な料理としては、具だくさん炊き込みご飯と、豆乳や牛乳を加えた具だくさん汁物。これにつきます。お弁当で家族から喜ばれたのは、蒸し野菜をスライスチーズで味つけするチーズあえ。適塩を意識するには、だしで調味料を割る。酢や香辛料を利用する。1週間、1日1食でも適塩生活を続けると、薄味に慣れ、味覚が変わっていくのが実感できますよ!

【令和食にプラスしてウォーキングは1日8000歩】

「健康長寿を達成するためには運動も重要。私は1日8000歩を歩くようにしています。これは高齢者の運動と健康に関する研究結果で、1日8000歩、そのうち20分を早歩きすることで、高血圧症、糖尿病、認知症などを防ぐことがわかったからです」(家森先生)

イラスト/くぼあやこ(『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』より)
イラスト/くぼあやこ(『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』より)
【写真】家森先生の奥さまお手製、色とりどりの栄養満点“令和”弁当

「大豆+魚」で認知症を予防

「健康長寿食材で卓抜しているのは魚+大豆です」(家森先生)

 2016年に兵庫県で得られたデータでは、魚と大豆それぞれの摂取量の多いグループから少ないグループの3つに分け、葉酸値を測定した。最も葉酸値が高かったのは、魚と大豆を多くとっているグループだった。葉酸は、ビタミンB群の一種で脳の発達に深く関係しており、認知症の予防に効果があるとされている。

「実際にオックスフォード大学で葉酸が認知症予防にどれだけ効果があるか研究されました。結果、葉酸をとっていたグループはそうでないグループに比べて明らかに脳の萎縮が少なかったのです

究極の手抜き料理で令和食を実践!

 監修者の森真理先生に、簡単な令和食の作り方を聞いた。

「基本ルールはたった2つ。(1)蒸し野菜や乾物類で“まごわやさしいよ”を料理に取り入れる、(2)しょうゆの代わりにだしやお酢、スパイスなどを活用する。これだけです。炒めたり煮たりすると油や塩が必要となりますが、蒸し野菜はそれらが不要。その蒸し野菜をかつお節であえたり、お酢やしょうがで味つけして適塩の副菜に。

そうすれば、あっという間に1日に必要な野菜(350グラム)を摂取できます。蒸し野菜たっぷりの副菜を食べて、わずか1か月で高血圧、中性脂肪、コレステロール値が改善されたケースもあります」(森先生)

“遺伝子が喜ぶ”食べ方を

「生物は海から生まれました。海水の中に溶け込んでいるマグネシウムを使って、生物は体内を維持する仕組みを作り上げたのです。その後、一部の生物が陸に上がった。海から陸という環境に適応するためには浸透圧の変化に対応する必要があります。タウリンには、浸透圧を調整し、身体のバランスを維持する働きがあります。

 そんな進化の過程から考えても、私たちにはマグネシウムとタウリンがとても重要なことがわかる。2つの生命のもと、マグネシウムとタウリンを摂取する。それこそ私たちの身体に脈々と息づく“遺伝子が喜ぶ”食べ方なのです」(家森先生)

 タウリンは魚介類や海藻など「海のもの」に多く含まれ、マグネシウムは大豆などの豆類、精白されていない穀物、野菜など「山のもの」に多く含まれている。海の幸、山の幸を食べ、適塩を守る。そんな令和食で長寿体質を目指そう!

『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』(集英社インターナショナル刊・森真理東海大准教授監修)※記事の中で画像をクリックするとamazonのページに移動します
教えてくれたのは……冒険病理学者 家森幸男先生
医学博士。武庫川女子大学国際健康開発研究所所長、京都大学名誉教授。30余年24時間、マサイ族から各国先住民族まで世界中の尿を集め分析。その研究結果をまとめた『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』(集英社インターナショナル刊・森真理東海大准教授監修)ほか著書多数。

(取材・文/ガンガーラ田津美)