[極意3]安心してもらえる「話し方」を心がける
■認知症の世界での話し方を認知する!
認知症の人は、まわりの会話のテンポについていけず、疎外感を感じていることも多い。わかったふりをするのも、自尊心からだったり、遠慮していることもあるという。
「そんなときに、“言ったでしょ!”と責めても、本人は傷つくだけ。でも、話し方を変えるだけで、表情がやわらいでくるんです」
話し方の第1のコツは、まず「私はこれから、あなたに話をしますよ」と自分を認識してもらうこと。そのためには、手をふって注意を引いてから、声をかけるとよい。
■話し方が変われば社会も変わっていく
「第2には、ゆっくりと、一語一語ていねいに話すことです。認知症の人の時間はゆったりと流れています。そのことを周囲が“認知”できていないなら、周囲の人の認知に問題があると思うんですよ」
この話し方は、認知症に限らず、街で困っている高齢者に接する際にも役立ちそうだ。
「より多くの人が認知症の人の気持ちを考えて行動するようになれば、さまざまな困りごとを抱えている人にも、もっと優しい社会に変わっていくのではないでしょうか」
厚生労働省の推計によると、2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症になるという。認知症の人とともに、人に優しい社会をめざすことは、将来の自分のためなのかもしれない。
川畑智(かわばた・さとし)さん
理学療法士、(株)Re学代表。病院や施設における認知症の予防やケアに取り組む。自治体の認知症予防プログラムの開発のほか、精力的に講演も行う。著書『マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界』(文響社)が好評発売中。
理学療法士、(株)Re学代表。病院や施設における認知症の予防やケアに取り組む。自治体の認知症予防プログラムの開発のほか、精力的に講演も行う。著書『マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界』(文響社)が好評発売中。
(取材・文/志賀桂子)