最近、めっきり目にしなくなったギラギラと輝くド派手な霊柩車。いったい、あの霊柩車はどこに行ってしまったのだろう。そこから見えてきた、霊柩車にまつわるイマドキの事情とはーー。(取材・文/ライター・熊谷あづさ)
3タイプに分かれる霊柩車
子どものころによく目にしていた、黒い車体に金色のお社のような装飾をつけたド派手な霊柩車。そういえばこのごろは、“ザ・霊柩車”的な霊柩車を見かけなくなりました。とはいえ、霊柩車は昨今の葬儀の過程で欠かせないもののひとつです。
そもそも、霊柩車が一般的に用いられるようになったのは1910年代後半だといわれています。当初はトラックの後部に輿を据えてご遺体を搬送し、次第に輿が据え置きの形になったそうです。
ド派手な霊柩車の行方やその種類といった、霊柩車に関する疑問や近年の霊柩車事情について、名古屋を中心に愛知県、岐阜県、東京都でご遺体の搬送業務を行う霊柩自動車運送事業の専門会社「(株)ハース・ジャパン」にお話をうかがいました。
「霊柩車には3つのタイプがあり、一般的に霊柩車でイメージされるお社のような輿がついた車両は『宮型』です。
地域によって輿のカラーやデザインが異なり、たとえば関東では一般的な木と金細工を利用したものになりますが、名古屋では“黒壇”と呼ばれる黒い車両や、龍や鳳凰がついたものもあります。関西には“白木”と呼ばれる未塗装のものがあり、定期的に表面を削って磨き、白木の状態を保たなければならない、大変手間のかかる車もあります」
昨今、主流なのは『洋型』と呼ばれるタイプ。リアオーバーハング(タイヤの後ろからトランク)を延長したものや、車両の中間(ホイールベース)を延長したものがあり、屋根は革張りとなるそう。
「また、『寝台車』と呼ばれ、病院からご自宅や、病院から葬儀会館など、主に葬儀以外でのご遺体の搬送に使うタイプもあります。近年は葬儀の低価格化や葬儀で目立ちたくない方のために、寝台車を利用した出棺が行われることも多くなっています。
この3つのタイプ以外に、一部地域ではバスの最後部などに棺を納める『バス型』が主流のところもあります」