ステージ0やがん一歩手前も検知
日本のがん検診受診率は諸外国に比べて低い値だ。
「手軽ながんリスク検査がもっと普及し、早期発見につなげたいですね」
現在、日本人の死因の1位はがんだ。
「乳がんや子宮がん検診を受ける女性は比較的多いですが、死亡数が高いがんは、大腸がんや肺がんなのです」
早期発見なら助かるがんも、進行してからでは治療の道がなくなる。特に膵臓がんは発見しにくく、発見時には余命が短いケースが多い。
「検査の種類によりますが、ステージ0のがんはもちろん、がん細胞になる一歩手前の段階でも結果にあらわれます。当クリニックでは、私が開発した唾液によるリスク検査を行っており、がん細胞の前段階も発見されています。ある60代の女性の方はリスク検査の数値が高く、内視鏡検査を行ったところ、大腸がんになる一歩手前の細胞がポリープとして見つかりました」
この女性は、ポリープを切除しただけで事なきを得た。また、夫婦で受検した60代は、夫に大腸がんとすい臓がんのリスクが見つかった。
「その後、CTと内視鏡検査を行い、大腸がんの進行がんが見つかりましたが、切除手術により抗がん剤治療も行わず完治しました」
さらに進行していたら、命が危なかったという。
「40代からがんリスクが高まるため1年に1度の検査、遺伝的リスクが高い人は3か月~半年ごとの検査をすべき」
がんリスク検査は保険適用がないため、費用は1万円台前半~と高めだが、進行がんが見つかったときの治療費を考えると決して高くはない。
「リスク検査はがんだけでなく生活習慣病や認知症の分野でも進んでいます」
将来、リスク検査で早期発見が進めば、老衰が死因の1位になるかもしれない。運動、食事、睡眠などの生活習慣改善とともに、リスク検査を行うことが健康寿命をのばすカギになりそうだ。
尿でわかる! サステナブルな線虫をつかった最新検査N-NOSE(R)
尿1滴でがんリスクがわかるN-NOSE(エヌノーズ)(R)は、昨年1月から実用化がスタート。線虫というわずか1ミリにも満たない生物を利用した検査だ。
「線虫は犬に匹敵する嗅覚を持ち、微量なニオイ物質を検知することができます。さらに、がんによる代謝物のニオイを好む傾向があります。線虫を入れたシャーレに一定の割合で薄めた尿をたらすと、がん患者の方の尿には寄っていきますが、健康な方の尿からは遠ざかります」(広報担当者、以下同)
線虫は雌雄同体で同じ遺伝子を持つクローンのような存在が作れる。そのため、個体差がなく同じ嗅覚能力を持った線虫を使うことができる。
「研究段階ではひとつひとつ手作業で行っていましたが、現在は機械を導入。同じ検体で繰り返し検査を行い、結果は独自のアルゴリズムで導きます」
検査の方法は、WEBサイトから検査キットを申し込み、尿を採取して、専用の集配を頼むか、全国10か所にあるN-NOSE(R)ステーションに持ち込む。がん種までは特定できないが、他のがんリスク検査に比べ、高精度かつ安価なため、まず初めに受ける“がんの一次スクリーニング検査”に適している。