化学物質を肌から取り込む経皮毒
「チクチクする、かゆいといった物理的刺激は、肌に直接触れるものによって起こります。その場合は、肌着を天然素材のやわらかいものにかえることでおさまることがあります。いっぽう、化学的刺激は洗剤や柔軟剤などの化学物質で起こります。衣服や肌着の素材にどれだけ気をつけても、刺激の強い洗剤を日常的に使用していては意味がありません」
田中先生によると、気づかないうちにこれらの化学物質を皮膚から吸収し、有害な作用を引き起こすことがあるという。肌トラブルの原因のひとつが、この「経皮毒」である可能性も捨てきれない。
「皮膚の薄い陰部は、特に経皮吸収率が高いことがわかっています。神経質になりすぎて、身に着けるすべてを天然素材にする必要はありませんが、せめて下着はやわらかい綿や絹などを選びましょう。肌トラブルがなかなか改善されないという人は、いま使用している洗剤を見直し、柔軟剤の使用をやめてみましょう」
野村先生は、
「肌着は信頼できる店舗、メーカーのものを購入することも大切」と話す。
「身体のかゆみを訴える患者さんに、いま着ている肌着の素材を尋ねることがあります。綿だと答える患者さんの肌着を触らせてもらうと、明らかに肌触りが化学繊維で、おかしいなと感じることがあるんです」
最近では、安価な外国製の衣類がネットで簡単に手に入るようになった。そんななか、国民生活センターには
「服の組成繊維に関するタグの表示が、実際のものとは異なっているようだ」という相談も寄せられている。
実際に、英語表記で「ポリエステル65%、綿30%、スパンデックス(編集部注:ポリウレタン)5%」と表示されていた子ども服が、国民生活センターの調査の結果、「ポリエステル83・4%、綿11・5%、ポリウレタン5・1%」と判明したケースもあった。アレルギー性皮膚炎などを引き起こさないためにも、直接肌に触れる肌着を購入する際は特に注意が必要だ。
「軽くて暖かいフリースやスポーツ用のドライシャツなど、安価で機能的な化繊衣類はうまく使えば便利なもの。大事なのは、天然素材との上手な使い分けです」(野村先生)
もはや、肌着選びが健康を左右するといっても過言ではない。これからの乾燥する季節を健康に、快適に過ごすためにも、この秋は新しいアウターを買う前に、まずは肌着から見直してみるのはいかがだろうか。
野村有子(のむら・ゆうこ)●野村皮膚科医院院長。医学博士、皮膚科専門医。アトピー性皮膚炎や乾燥性湿疹を中心に皮膚疾患の診断・治療を行っている
田中佳(たなか・よしみ)●日本脳神経外科学会認定元専門医、日本抗加齢医学会認定専門医。ドクターセラピストとして健康になるための方法を伝える講演活動に取り組んでいる
(取材・文/植木淳子)