モンスター化しないためのポイントとは

 では、自分の親や自分が介護を受ける際にモンスター化しないためにはどうすればいいのだろうか。

まずは介護サービスの利用者とヘルパーは対等な関係だという点を忘れないことが大事です。介護は、行政が行う社会福祉ではなく、あくまで契約で成り立つ民間サービスだということを心得ておいたほうがいいでしょう」

 高齢者に事業者を選ぶ権利があるのと同時に、高齢者が選ばれる側でもあるのだ。特に在宅介護は自宅で介護を受けるため、利用者の気がゆるみやすく、介護ハラスメントが起きやすい。たとえ自分の家でも、緊張感を持ち一定の距離感を保ってヘルパーと向き合うよう意識したい。

 また、ヘルパーを自宅に迎え入れる前に、家族が高齢者本人に「いまは時代が違うから、変な話をするとサービスを受けられなくなるよ」「偉そうにしちゃだめだよ」と声をかけておくこともハラスメント防止に有効だ。

「もちろんヘルパー側が悪いこともあります。掃除をなまけるとか、そういう場合はしっかり苦情を言っていいのですが、弱者を助ける援助者、という意識で横柄な態度にならず、社会的マナーを守ってサービスを利用することが“介護難民”にならずに介護サービスを受け続けるために重要なのです」

あなたの親は大丈夫? モンスター高齢者にならないための3か条

(1)ヘルパーと自分は金銭の契約で結ばれている「対等な関係」であることを忘れない!

(2)自分にそのつもりがなくても、相手の受け取り方によってはハラスメントになりうることを意識する!

(3)自分の家だからといって気を緩めず、家族以外と接しているという緊張感を常に持つ!

高齢者の家族がモンスター化することも!

 介護サービスを利用する高齢者の家族からハラスメントを受けたケースを紹介する。

 ヘルパーのAさんは、認知症と診断を受けた高齢者の在宅介護を担当することになり、その利用者と同居している子どもB氏と接することに。ところがそのB氏が問題で、利用者が薬を飲み忘れても声をかけず、認知症である親のトイレの見守りもしない。

 そのせいで利用者は、血圧が上がって動けないことが多く、服も汚れていてネグレクトが疑われる状態だった。

 Aさんは、飲み忘れ防止のためのカレンダーに薬をセットし、子どもであるB氏に服薬の重要性を説明して協力を求めたが、「やるから!」「体調が悪いのはこっち(自分)のせいだと思ってるんだろう」と怒るだけで、一向に改善しなかった。

 一方、認知症の親の体調が悪いと、「ケアの専門家なら認知症を改善させろ。プロに失敗は許されない」「責任の所在を明らかにしろ」「いつでも連絡がつくようにしておけ」と怒鳴ることが続いた。ヘルパーのAさんは地域包括支援センターに相談して担当をはずれたが、いまでもその家の近くを通ると、動悸がするという。

 介護サービスを受ける高齢者本人ではなく、その家族によるハラスメントも数多く報告されている。(厚生労働省「介護現場におけるハラスメント事例集」より)

《取材・文/木村彩》