金銭的なリスクは避け「小さく起業」を目指す

 シニアから起業するメリットはなんだろうか。

「生きがいや収入が増えること。これまでの人生経験を活かしてサービスを提供し、人から直接感謝を伝えられるのがうれしいという方が多いです」(片桐さん、以下同)

 大企業で働くほど消費者の顔は見えなくなり、家事や育児に奮闘しても感謝を伝えられることは少ない。そんなジレンマを起業で解消できたという人も。逆にデメリットも聞いた。

「金融機関からお金を借りた場合、事業に失敗すると資産が減ってしまうケースがあります。老後の経済破綻は避けるべき。まずは少ない資金で開業するのがおすすめです」

 バブル期のころには、数百万円程度のお金を借りて起業するのが一般的だった。しかし現在はインターネットの発達により、自己資金ゼロで開業できる仕事も増えている。さらに日本政策金融公庫や自治体の創業支援制度を活用すれば、低金利で融資が受けられることも。起業のハードルは現在、そうとう低くなっているのだ。

3つの円で自己分析、重なる部分が成功のカギ

 起業してみたい。でもやりたい仕事が見つからないときはどうしたらいいのだろうか。

(1)自分がやりたいこと、(2)自分ができること、(3)お金になること、の3つを兼ね備えた事業で起業するのがおすすめです。どれか1つだけでは、事業が長続きしにくい」

 また女性が起業しやすい事業は、女性ならではの経験を活かしたものともいえる。マナー講座やまつげサロン経営、母子家庭の就職支援サービスなど。また趣味を活かした手芸教室や書道教室、小物の受注販売なども多い。

「男女ともに開業しやすいのは、コンサルタントなど資金がかからないビジネスです」

 過去の経験を活かせることを探せば、自分ならではの起業スタイルが見えてくる。

知っておきたい! 起業までのプロセス

(1)事業内容を考える
(やりたいこと・できること・収益が得られることをすべて満たしているとよい)
(2)事業計画書の作成
(自治体の創業支援サービスでサポートを受けられる)
(3)開業場所・費用・開業形態の検討
(女性は自宅で個人事業主として起業する方が多め。法人化しなくても起業はできる)
(4)テストマーケティング
(お試しでサービスを提供し、ユーザーの反応をうかがう)
(5)開業届の提出
(税務署に用紙を提出すれば完了)
(6)創業融資などの活用
(資金が必要なら、国や自治体の創業支援制度を使おう)
(7)営業活動、事業を軌道に乗せる
(SNSを使えば営業コストは0円)

起業するなら利用したい! サポート制度

●全国共通
日本政策金融公庫「女性、若者/シニア起業家支援資金」
女性、35歳未満、55歳以上が対象。最大7200万円まで低金利で融資を受けられる。

●地方自治体が提供(一例)
東京都「女性・若者・シニア創業サポート事業」
女性、39歳以下、55歳以上が対象。1500万円以内の低金利融資や経営サポートなどが受けられる。
大阪府「開業サポート資金」
女性、35歳未満、55歳以上が対象。場合によって1500万円〜3500万円を限度とした低金利の融資が受けられる。

※開業する場所の都道府県や市区町村が扱っている制度は、重複して利用することも可能。条件などは開業する地域の創業支援窓口で問い合わせを。