『¥マネーの虎』の舞台裏

 ある日、日本テレビから出演依頼がくる。連絡をしてきたのは、番組を担当するプロデューサーだった。

「聞いて呆れました。われわれに出資しろというのに、テレビ局はギャラも交通費も出さないっていうんだから。この男、こんな依頼を平然としてきて、勇気のあるやつだな、こいつと付き合ってみたいと思ったんですよ」

 『¥マネーの虎』は、'01年10月から番組が始まった。

 自分が、安易にカネを手にしても成功しないということを身をもって経験しているからだろう、厳しい意見を言うことが多かった。また登場回数は“虎”の中でいちばん多かったが、出資金額が少なかったことでも知られる。

「番組で出資を勝ち取れなかった人でも、なんとかしてその事業を成功させている人もたくさんいるからです」

社長室は設けず、社員たちが集まる会議室に社長机とクローゼットだけを置くのが堀之内流 撮影/齋藤周造
社長室は設けず、社員たちが集まる会議室に社長机とクローゼットだけを置くのが堀之内流 撮影/齋藤周造
【写真】テレビ番組で各政党の官房長官と議論する堀之内さん

 番組では気に入らないことが1つあった。“虎”同士のバトルである。

「『あなたの考えは間違っている』とか私に面と向かって言う。あれをやられると、会社の看板に傷がつくし、従業員も『うちの社長、大丈夫かな』と動揺しますよ。だからやめようと言ったんです」

 番組の効果は絶大で、全国各地から講演の依頼が舞い込む。商工会議所、青年会議所、学校、婦人会などで1800回もしゃべった。

 しかし好事魔多し。仕事が忙しすぎたのかもしれない。

 2005年、胃にがんが見つかったのである。しかも医師からは「3年もたない」と宣告された。

「俺の人生も終わったなと思いましてね。すると食事ものどを通らなくなって、80キロあった体重は73キロになりました。死の恐怖というのを味わいました」

 しかし幸運にも腕利きのスーパードクターの手術を受けられることになる。手術は成功し、いまも再発はない。

「人生観が変わりましたね。何も怖くなくなりました。売り上げが悪いとか、日々問題はあるけど、屁みたいなもんですよ。命までは取られない」