「会社差し押さえ」噂の真相

 3年後の'08年には、会社が仮差し押さえされる問題が起きたときも、堀之内さんは冷静だった。ネットニュースにはネガティブな臆測が流れたが、店は営業していた。

 事の真相はこうだ。生活創庫は三洋電機クレジットから融資を受けていたが、三洋電機が倒産したため、同クレジット会社はアメリカのGEに買収された。しかしGEは金融業から撤退することになり、お金をすぐに返せと主張するようになった。

「こちらは約束どおり返済しているのに、いきなり全額を返せと言われても無理だと言うと、裁判を起こし仮差し押さえしてきたんです。そうなると金融機関からの信用はなくなるので、いったん生活創庫を閉じ、新しい会社を作ることになったのです」

 そう話す堀之内さんだが、当時はいろいろな感情が渦巻いていたようだ。前出のBさんは当時、社長秘書として働いていた。車やさまざまなものが差し押さえされ持ち出されたが、堀之内さんは、

「何でも持っていけ!なんとかなるわ、大丈夫!」

 と言っていたという。

 しかし1つだけこだわっていたことがあった。クレジットカードである。個人の民事裁判や自己破産をしたほうが楽にはなるのだが、絶対にしないという。理由を聞くと、「クレジットカードがなくなるから」の一点張り。前出のBさんが言う。

「バカじゃないの?と思って。詳しく聞いたら、過去に商売をしてローンを返せなかったりして信用調査会社のブラックリストに載ったことがあって、長くクレジットカードが持てなくて悔しかったらしいんです。

 当時も60枚近く持っていて、年会費だけでも100万円ぐらいかかるから解約したほうがいいと言っても、“嫌だ”の一点張り。人間って、そういうときに隠しおおせない過去が出てくるんだなと思って」

 そこまで話してBさんが思い出した。堀之内さんの妙なこだわりのことだ。それはベンツのダッシュボードに置かれた使用ずみ爪楊枝、後部座席に無造作に置かれた何十本もの飲みさしのペットボトルと鼻をかんだ、ティッシュペーパー。汚いからBさんが捨てようとするとダメだという。

「ペットボトルも水を飲むためじゃないんだ。いつか役に立つかも知れないから」

 Bさんによれば、とにかく捨てられないタイプだという。中古品を扱う商売柄ではなく、ここにも人生観のようなものが垣間見える。