変わらないことが信頼につながる
「戦時中・終戦直後は華美な化粧が避けられており、化粧品工場も軍需工場になったところも少なくありませんでした。資料が残っておらず当時の製造量はわかっていませんが、スキンケアは該当しないとされ、原料が調達できれば『美顔水』は製造されていたと推測されます」(企業広報の塔筋雅美さん、以下同)
当時の人々は戦火の中、『美顔水』を守り、製造を続けていたのかもしれない。
「明治・大正時代から需要が高まり、当時から海外にも輸出していました。現在に至るまでその処方は変わらず、今日まで引き継がれています。
それにホモスルファミンは既得権により化粧水では弊社の美顔水のみに使える成分。それを今変えてしまうと二度とホモスルファミンで処方できなくなってしまいます。そのため、今後も処方は変えずに守り続けていきます」
そしていつの時代も肌の悩みは共通しているもの。
「ニキビは成長の過程で一時的に悩んでも、いずれ卒業するときが来るのがほとんど。そのため、解決したら美顔水の使用をやめる人もいます。
マイナーチェンジはあったもののパッケージも青いボトルにアールヌーボー調のデザインも刷新することはありません。変わらないことは安心・安全を伝える目印にもなっているので、大人ニキビでまた使用を再開する人もいます」(石田さん)
同社では災害発生時に避難所などに化粧品を届けたり、コロナ禍では医療従事者、生活が困窮した人々の支援も積極的に行っているという。
「2020年には西洋医学に基づき処方された日本初の化粧品ということで化学遺産の認定をもらいました。
開発当時、サリチル酸などの成分は日本ではまだ手に入りにくく、自然派化粧品が多かった時代に新しい技術を取り入れた商品開発は化粧品の歴史的にも文明的にも新しいもの、とされたんです」(塔筋さん)
『美顔水』が今日まで続くロングセラーアイテムとなった背景には「口コミ」がある。
「お母さんやおばあさま、友達や近所の人が使っていたことをきっかけに使用を開始した人は少なくありません。創業のきっかけになったのも口コミ。
136年たった今では、オンラインでも同じような広がりを見せているんです」(石田さん)
長い歴史は家族の中でもそのよさが引き継がれていく。
「美顔水と併せて弊社の別の商品も3代にわたって愛用する家族もいます。変わらないことが信頼にもつながります」(伊藤さん、以下同)
そして現代的な口コミのSNSが役割を引き継ぐ。
「『美顔水』が好きだから、広めたいと気に入った方自身がインフルエンサーになってくださっています。ユーザーが愛を持って接してくれているのも『美顔水』の魅力です」