介護で困ったときは“老健”を頼るのもアリ

 Aさんは公的な安い施設を探してみるもすぐに入れるところは見つからない。実はAさんはこのころ、交際していた男性との結婚を考えていたのだが、このままでは自分が介護するしかないから結婚を諦めようと思っていたという。ただ、仕事を辞めて月5万円弱の父親の年金だけになったら、たちまち生活費にも行き詰まって途方に暮れるのは明らかだ。

「Aさんの婚約者から相談を受けて私が提案したのは老人保健施設(老健)を探すことです。老健とは、在宅復帰や在宅療養支援などを行うための施設。入所一時金等の費用がかからないうえ、介護保険が使えるので民間に比べるとかなり安く抑えられます」

 デメリットとしては最長でも1年と期間が決まっていること。ただ、病院が運営していることが多いので、期間が終わっても別の老健を紹介してもらえる可能性もある。

 さっそくAさんは家の近所の老健に直接相談に行って、1人のままにしておくと危険なことを説明。その結果、老健に入れることに。おかげで結婚も無事にできたという。

「みんながすぐに入れるわけではありませんが、緊急で介護が必要な場合は、老健という手もあります。親のことで何か困ったことがあったら自分1人で抱え込まず、近くの老健に相談するのもいいと思います」

【解決ポイント】
・老健は急に介護が必要になった際の駆け込み寺。困ったときは当たってみるのも手。

(実例その3)……介護離職すると年金が30万も減る!?

 この実例は今回取材した柳澤さんご自身の体験。柳澤さんの母親は65歳のときに脳梗塞で倒れ、右半身に軽い麻痺が残った。

「再び倒れたらもっと大きな後遺症が残るかもしれないと医師から聞いていたので、母は九州、私は関東と遠距離だし仕事をどうしようかと焦りました。そこで仕事を辞めずに親の介護ができる方法はないかと、地域包括支援センターや介護職の知り合いに相談して乗り切りました。会社員や公務員の場合、介護離職すると今の生活だけでなく、老後にも大きく影響するので要注意です」

 例えば現在の年収が700万円で、それまでの平均年収が600万円の女性が50歳で介護離職した場合と、仕事をセーブして年収200万円ダウンしても働き続けた場合を比較すると、介護離職することで生涯賃金は5千万円、将来の年金は年間27万5千円も少なくなる。