夜間保育所への偏見

 だが、夜間保育所に対する『大変な家庭の子』や『貧困家庭』などの利用者が多いと偏ったイメージはいまも払拭されていないという。

 保育の量的な拡大、保育士の確保と保育の質の改善などを目的にした子ども・子育て支援新制度が2015年改正されたのだが、今なお現場とのすり合わせも続いている。

「深夜や年末年始など働かざるをえない社会では保護者の負担が大きい認可外保育施設に預けざるをえないこともあります。

 ですが国としても子育て家庭の自助に頼るのではなく、公助として社会に必要な制度・環境を整えられ、すべての子どもに保育ができるような社会をつくってほしいと願っています」

 24時間社会。いつでも誰かが働いている。

 そんな中においても子どもたちを第一に親子に真摯に寄り添う保育士たち。『第2のわが家』で子どもたちは育まれる。

全国夜間保育園連盟 酒井義秀さん●酒井さんが会長を務める同団体は認可夜間保育園の全国組織。現在、認可夜間保育園60か園が加盟する。運営時間や方針などは所属する園それぞれで異なる。

運営者からみた“年末年始”

きょうだいみたいな絆 自宅のような夜間保育園 キッズタウンうきま夜間保育園(東京・北区)

 東京・北区の「キッズタウンうきま夜間保育園」。今年で15年の認可夜間保育園だ。

「この年末年始も数名の園児をお預かりしました。年末年始を意識しているのは大人だけ、子どもたちにとっては普通の日。ただ、園の様子もいつもとはちょっと違うので寂しい思いをさせないよう心がけています」

キッズタウンうきま夜間保育園の教室。まるで自宅の一室のようなアットホームな造り。ここで子どもたちは過ごす
キッズタウンうきま夜間保育園の教室。まるで自宅の一室のようなアットホームな造り。ここで子どもたちは過ごす
【写真】自宅のようなアットホームな造りの「キッズタウンうきま夜間保育園」

 そう話すのは同園園長の小林美樹さん。12月31日の大みそかは7人。元日と2日には1人が登園してきたという。

「年末は家庭では大掃除をしますよね。そこで園でも子どもたちと一緒に大掃除をしました」(小林さん)

 年末年始の少人数だからこそできること。子どもたちの中には年末登園常連のきょうだいがいる。両親は蕎麦店を営んでおり、この日は1年でいちばん忙しい日だ。

「子どもたちも大みそかの両親の仕事のことは理解しており、園での過ごし方を自分たちで提案するようになってきました。

 昨年も大みそかの数日前から“紅白も見よう”とか“あの番組も見ようね”とか、自分たちの過ごし方を考えているようでした。

 普段から心がけていることですが、自宅で過ごすのとなるべく変わらない時間を過ごさせてあげたいと考えているんです」

 食事も正月だからと特別なものを出すのではなく、いつもと変わらないものを提供。

キッズタウンうきま夜間保育園の教室。この部屋で子どもたちは一緒に夕食をとる。現在は正面を向いて食べるなど感染症対策も
キッズタウンうきま夜間保育園の教室。この部屋で子どもたちは一緒に夕食をとる。現在は正面を向いて食べるなど感染症対策も

 同園での年末年始以外の時期の過ごし方も尋ねてみた。

「夜間保育園の保育時間は午前11時〜午後10時が通常。この時間帯の前後は延長料金がかかります。11時にそろって外遊びをし、昼食。お昼寝などを経て、子どもたちは夕食も食べて帰ります。

 午後7時~8時がお迎えのピーク、午後11時まで待つ子も。寝ている子もいれば起きている子もいます。各家庭での生活リズムを守り、子どもにはどんな対応をすればいいか保護者と相談しながら保育しています」