「リモートワークによって、満員電車に乗らなくなったのはありがたいのですが、社用スマホを介して会社からチェックされるようになり、わずらわしくて。リモートワークならではの新しいストレスというか」
そう苦笑交じりにこぼすのは、都内の金融系企業に勤務する40代の男性。長引くコロナ禍によって、リモートワーク(テレワーク)が推奨されるようになった。それにともない、「リモートワークの生産性を高めたい」といった理由から、社用スマホの導入を推進する企業が増えているのだ。
「新型コロナウイルスが流行して以降、問い合わせの数は倍以上に増えました」
と語るのは、法人携帯スマートフォンの販売やリモートワーク用のビジネスツールを提供するテレニシ株式会社の篠原正樹さん。最初のコロナ禍となった2020年の売り上げは、前年比120~130%というから驚きだ。
そもそも社用スマホを導入する主なメリットとは何か? ひとつは、パソコンに頼らなくてもオンライン会議やチャットツールなどに対応できるだけでなく、会社の固定電話のように、仕事での連絡のコストを社員が負担しないですむ点。次に、会社から支給されることで、社内の情報をスマホ上で共有・管理しやすく、セキュリティー対策も社費で対応するため、万全を期すことができること。
また、データ通信料が会社負担の場合は、速度制限などの負荷がかからずストレスなしでネットに接続することができる。そしてスマホを介して労務管理、勤怠管理をすることができる点も企業にとっては利点となる。
こうした優位性から社用スマホを導入し、リモートワークの生産性向上を掲げる企業が増えているわけだが、冒頭の男性のように、社用スマホをチェックされることで、「まるで監視されているよう」といったストレスにつながっていると話す人は少なくない。
過剰利用は“業務上横領”行為にあたる
会社側はどこまでチェックできるのか。前出の篠原さんが説明する。
「基本的には、毎月の通話料・通信料、通話履歴、GPSによる位置情報などになります。社用スマホに、オプションとしてソリューションサービスを導入することで、アプリのインストールに制限をかけたり閲覧するサイトに制限をかけることが可能になります」
例えば、ソリューションサービス次第ではYouTubeの利用自体に制限をかけることも可能なのだ。社用なのだから、私用のための通話やアプリを利用するのはルール違反。「ちょっとくらいは大丈夫でしょ」と、私的利用を軽く考える人もいるかもしれないが、塵も積もれば山となる。
過剰な利用は“業務上横領”行為にあたり、最悪の場合、懲戒解雇につながるケースもあるというから甘く見ないほうが賢明だろう。