会社によっては業務時間外はGPSをオフにするといった措置をとるケースもあるが、これも一長一短だという。
「プライバシーの侵害を考慮してオフにする企業さまもあれば、日本は災害が多いことから従業員さまの安否確認のために業務時間外もオンにして、無事が確認されると通知が届くようにしている企業さまもいます。
そういった使い方もあるのですが、プライバシーの侵害にどうしても焦点があたってしまうため、プラスの部分に関してはなかなか論点にならないという現状があります」(篠原さん)
そのため篠原さんの勤務するテレニシでは、導入希望の企業と話をする際は、社員の安全が担保される点、情報や秘密が漏洩しない点に重きを置いて説明するという。
違反行為の明文化でトラブル回避
一方で、企業と(スマホを渡された)社員の信頼関係が問われるところがあるため、「事前にルールや仕組みを説明し、きちんと周知させることが大事」とも。先のAさんの会社のように、“私用利用の禁止”や“有料サイトの登録禁止”といった、違反行為を明文化していくことでトラブルを回避しやすくなる。
「故障した際は、誰が修理費を払うのか、などイレギュラーなことが起きたときの対処法についても、きちんと説明しておいたほうがいいと思います」(篠原さん)
コロナ禍によってリモートワークが定着し、さらには社用スマホまで普及し始めている。法人携帯スマートフォンの販売先として、コロナ以前では導入が目立たなかった業種が、社用スマホの利用を開始するケースも散見されたそうだ。
例えば、個人情報を厳重に扱う介護業界などはコロナ禍を機に社用スマホを導入し、情報をデジタル化することで働き方の効率化を目指しているという。
「企業さまや従業員さまから、“社用スマホを支給されないほうが困る”といったご意見をいただく機会も多いです。会社から携帯電話を支給されずに、私用の携帯電話を使うとなると、端末の性能などによって仕事環境が変わってしまいます。また、職場や取引先と情報を共有する場合、自分のスマホを介すとなると、プライベートの連絡先を交換する可能性もあります」(篠原さん)
自身のプライベートを守り、ブラック労働対策としても“社用”は効果的かも……。リモートワークがもたらす新しい会社の常識。社用スマホの普及は、その一端を表しているのかもしれない。
取材・文/我妻アヅ子