今年1月、すべての大手電力会社が電気の値上げを発表、家計を直撃したが、まだ序章だと経済ジャーナリストの松崎のり子さんは言う。
「新型コロナによる経済停滞が回復に向かいエネルギー資源の需要が増加。そこに2月に突然始まったロシアによるウクライナへの侵攻という国際情勢が重なって、国内の電気料金上昇が特に目立ってきました。この4月の電気代は比較可能な過去5年でもっとも高い水準になります」
電力各社、過去5年で最高値
月々支払う電気代がどう決まるか。キーとなるのが「燃料費調整額」。この燃料費調整額が高額な電気料金の一因だ。
燃料費調整額は火力発電に用いる燃料、原油、液化天然ガス(LNG)などの価格変動によって、2か月後以降に電気料金に反映される。燃料費は国際情勢により変わりやすい。そのため、できるだけ国内の燃料費、つまり電気料金の急激な値上がりを抑えるためにこの制度が取り入れられた。この燃料費調整額が昨年から高騰したため、月々の家庭の電気代も値上がりしたというわけだ。
この高値がいったいいつまで続くのか。現在の国内電気代の値上がりには主に3つの国際的要因が関わる。
1つ目はウクライナ情勢。ロシアは天然ガス輸出量世界1位のエネルギー資源大国。そのロシアと欧米の関係はウクライナ情勢により緊迫化し、経済制裁が発令されている。その結果、天然ガスの国際価格が高騰、国内の電気料金にもしわ寄せがきている。
2つ目は、OPEC(石油輸出国機構)による原油増産が進まないこと。一時のコロナショックから急回復して今年3月には130ドル超にまで上昇した原油価格にもかかわらず、世界への供給量増加は足踏みを続けるばかりだ。
そして3つ目の要因は、中国の急速な脱炭素化。大気汚染や地球温暖化対策として、石炭・石油の代わりにCO2排出量の少ないLNG発電にシフトする中国の問題。石油代替えのLNG大量購入が、日本を含むほかのアジア各国のLNG調達難につながっている。
「燃料費の高騰には、世界のさまざまな情勢が関わっています。ロシアがウクライナへの侵攻をやめても、家庭の電気料金が値下げされるのは、まだまだ先でしょう」(松崎さん)